『マキアヴェッリ語録』塩野七生/著(新潮文庫)
P179
一国の国力を計る方法の一つは、その国と近隣諸国との間に、どのような関係が成り立っているか
を見ることである。
もしも近隣の諸国が、友好関係を保ちたいがために貢納してくるようならば、その国は強国と言えよう。
反対に、弱体なはずの近隣諸国であるのに、それらの国々に対し金銭をもって援助する関係である
場合、その国家の国力は弱いと思うしかない。
――『政略論』――
P212
次の二つのことは、絶対に軽視してはならない。
第一は、忍耐と寛容をもってすれば、人間の敵意といえども溶解できるなどと、思ってはならない。
第二は、報酬や援助を与えれば、敵対関係すらも好転させうると、思ってはいけない。
――『政略論』――
P214
他者を強力にする原因をつくる者は、自滅する。
これは、ただ一つの例外も存在しないと言ってよいほどの、普遍妥当性をもつ原則である。
なぜか。それは、強力になれたのは、それをさせてくれた者の力と思慮によったからだが、
いったん強力になってしまえば、その者は、それに力を貸してくれた者の力と思慮の両方ともを、
自分の存亡の鍵をにぎっているとして、疑いの眼で見ないではすまないからである。
――『君主論』――
謙譲の美徳をもってすれば相手の尊大さに勝てると信ずる者は、誤りを犯すはめにおちいる。
――『政略論』――