南京大虐殺と言う虚構が、『奴等』にとって何故必要なのか?

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一般現役兵や下士官は、社会の下積みになって苦労してきたものが多か
った。木谷も、はやく父をうしない、さまざまな職業を経て兵隊になっ
た。字が上手で、能力もあったから経理室勤務になったが、ふとしたこ
とから週番士官の落とした財布を拾い、その金を着服したことから、経
理室内部の抗争に巻き込まれて、二年三カ月という重い刑に処せられた
。手帳や手紙の他愛もない言葉から、反国家的な思想の持ち主で、軍事機
密を漏らしたとされたのである。その裏には、自分たちの不正があばか
れることを恐れる経理室内部の勢力の働きかけがあった。
復讐を求めて真相を追求する木谷は、ふたたび経理室内部の勢力の工
作によって、南方に派遣される部隊に転属させられる。元来、出所直後
の者は転属させられないことになっていたが、不正な物資の運用によっ
て経理室内部の勢力は軍を動かす力を持ち、このような無法を押し通し
たのである。
派遣部隊に転属させられたのは主として所帯持ちの補充兵だったが、
富裕な家の者はさまざまに工作してそれを免れた。
「真空地帯」は内務班の陰湿な初年兵いじめだけでなく、軍隊内部の入
り組んだ人間関係、その腐敗の構造を描き出している。それが天皇の軍
隊の実体だった。この作品は、南方に向かう船に載せられた木谷が、
<一つ、軍人は忠誠を尽くすを本分とすべし>にはじまる「軍人勅諭」
を思い浮かべるところで終わっている。