>>166の続き
原決定は、薬物に関する新証拠(鑑定など)に基づき、ニッカリンTであれば当然検出
されるはずの物質であるトリエチルピロホスフェートが飲み残しのぶどう酒から検出され
ておらず、犯行に使用された農薬は、ニッカリンTではない可能性が高いとする。
しかし新証拠の鑑定内容を詳細に検討し、事件当時の三重県衛生研究所の検査結果など
とも併せ検討すると、混入されたのがニッカリンTであっても、トリエチルピロホスフェ
ートが検出されないこともあり得るものと判断され、使用された農薬がニッカリンTでな
いとはいえない。
使用毒物は、有機燐テップ製剤であることが判明しており、同じ有機燐テップ製剤であ
るニッカリンTが使用された可能性は十分に存する。
原決定は、新証拠(鑑定など)に基づき、証拠物の4本足替栓は、本件ぶどう酒瓶のも
のではない可能性があるというが、本件の瓶に装着されていたものに間違いない。
また原決定は、新証拠(開栓実験など)に基づき、公民館でぶどう酒が開栓される前に、
封かん紙を破らない偽装的な開栓が行われ、そこで毒物が混入された可能性があるという
が、証拠物の状況からは、公民館での開栓が間違いなく最初の開栓であったことが認めら
れ、偽装的な開栓があったとは認められない。
さらに原決定は元被告の自白の信用性を否定するが、自白は事件直後の任意取り調べの
過程において行われたもので、自白を始めた当初から、詳細でかつ具体性に富むものであ
った。元被告が勝手に創作したような内容とは到底思われない。
そしてその内容は、事件現場から発見された証拠物や客観的事実に裏打ちされているも
ので、信用性が高いということができる。この判断は、新証拠を併せて検討しても変わら
ない。原決定は、供述の変遷があり迫真性に欠けるというが、その判断は、一面的である。