http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200802250080.html 脱線事故で救急活動医師の自殺 過重労働が原因、父提訴
2008年02月25日
05年4月に起きたJR宝塚線(福知山線)の脱線事故で、現場で救助活動に
携わった済生会滋賀県病院(同県栗東市)の医師、長谷貴將(たかのぶ)さん
(当時51)が自殺したのは、病院側が求めた救急活動や災害医療についての講演
や研究会への参加などで過重な労働を強いられたためだとして、父親の昭さん(85)
が25日、同病院を運営する社会福祉法人恩賜財団済生会(東京都)に1億円の
損害賠償を求める訴訟を大津地裁に起こした。
訴状などによると、長谷医師は05年2月、「2人の部下を配置する」という
条件で滋賀医科大から同病院救命救急センターに着任。2カ月後に発生した
宝塚線事故では現場責任者として救護活動にあたった。
事故後、長谷医師に取材や講演の依頼が殺到。病院側が積極的に応じるように
指示したため、通常業務に加えて1カ月の3分の1以上は救急医療や災害医療
などの研修や講演に奔走した。勤務後の深夜や休日も資料作りに追われ、部下
の配置もなく、疲弊した。
さらに、病院にいることが少なくなったため、ほかの医師らから公然と中傷、
罵倒(ばとう)されるなどした。このため「うつ状態」に陥り、翌年5月に自殺した。
原告側は「病院の指示で対外業務が増加したのに、支援態勢をとらなかったうえ、
長谷医師への嫌がらせに適切な対応を取らなかったなど、安全配慮義務違反は明らかだ」
と主張している。
同病院の中野信次・管理部副部長は「取材や研修依頼については、本人の裁量で
やるようにと指示していた。ほかの医師に比べ勤務が過酷だったことはない。法廷で
明らかにしたい」と話した。