WILL 創刊2号 皇統「百二十五代」が日本の誇り
上智大学名誉教授 渡辺昇一
今年五月の皇太子殿下のご発言にコメントすることは差控えたいと思ってい
ましたが、秋篠宮様のコメントもありましたので、敢えて一言申し上げること
にします。それ自体はまさにご自身から発されたもので、周囲の近しい人たち、
ましてや天皇陛下には何もご相談されなかったのでしょう。
率直に申し上げて、将来皇后になる御方の、ご結婚以前のキャリアを重んじ
たいという殿下のご発想はいけません。外交官というのは、日本の国益のため
に外国と交渉する役目です。いったんご結婚されれば皇室の一員であり、皇室
は憲法が示すように日本全体の象徴という存在です。そこに属する御方が、結
婚以前のキャリアに言及されるのはいかがなものでしょうか。
雅子様が訴えられたことは、要するに「周囲に気を遣わなければならない」
「思うように外国に行けない」といった意味合いでしょうが、少し古い時代の
卑近な例で言えば、息子の嫁が、結婚したら下男や女中や姑に気を遣って、気
安く外出できないとこぼすようなものです。そういう会話はご夫婦の間にあっ
ても構いませんが、夫婦の話題を将来百二十六代の天皇になる御方として、ご
発言されたことはやはり不適当だったのではないでしょうか。また雅子様もお
覚悟不足の感は否めず、やはり皇室に入られたら「自分の公務は作らない。公
務は受け身的なものではないか」と秋篠宮様が仰っている通りだと思います。