マガジンハウス『ダカーポ』 542号(8/4) 週刊誌記者匿名座談会
D 手助けといえば、最悪だったのが4月に起きた例のイラク人質事件だろう。
あの事件では、人質に対して「自己責任論」なるバッシングが噴き出し、
本来ならもっとも責任を追及されるべき当の政府が何の批判もされない
まま逃げ切っちゃったんだけど、実はあれだって、メディアが官邸の情報
操作にまんまと乗せられた結果だからね。
C うん。人質バッシングはネットで火がついたといわれているけど、実はそれ
より前の事件発生直後から、官邸の関係者が新聞・テレビにしきりに「自作
自演」情報をリークしていたんだよね。「あの3人は思想背景がいろいろある」
「事件は自作自演の可能性が高い」と。担当記者の間では「最初にネットの
書き込みをしたのは官邸じゃないの」という冗談まで飛びかっていた(笑)。
D しかも、この情報操作は相当の効果をあげた。実際、『産経』なんて人質解
放前は官邸情報にまる乗りして、「日本人が知恵袋の可能性」「声明文が日
本人的」などと、「自作自演」をほのめかすような記事を平気でタレ流していた
からね。
マガジンハウス『ダカーポ』 542号(8/4) 週刊誌記者匿名座談会
B 新聞だけじゃない。『週刊新潮』なんてもっととんでもなくて、自作自演説はも
ちろん、3人の人質や家族のプライバシーを徹底的に暴きたてていた。それも、
人質の母親が共産党系の病院に勤めているというだけで「共産党一家」と決
め付けたり、高遠さんが事前に犯人グループと接触していたというガセ情報を
書きたてたり・・・・。しかも、この号の『新潮』が完売したために、様子見をして
いた『週刊文春』など他の週刊誌も次々参入。全体が「被害者たたき」一色に
なってしまった。
A ただ、週刊誌の情報源は官邸じゃなくて、内閣情報調査室と公安だと聞いたけど?
C いや、こうした組織を動かしていたのも実は官邸なんだ。中心となっていたのは
「影の総理」の異名を持つ首相秘書官の飯島勲で、事件発生直後から救出そっ
ちのけで、内調、公安調査庁、警察庁公安部に、人質3人の素性調査を指示。
自作自演説をはじめ人質のマイナス情報をマスコミにリークするよう大号令を
かけていたらしい。
B 実際、飯島はこの事件をめぐる情報操作の参謀本部長的な存在だったといって
もいい。直接、飯島から情報を耳打ちされた記者も何人かいるしね。