【DQN?】今年も荒れた成人式【ホントに大人?】

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5週間金曜日より
自我作古 第238回 筑紫哲也
新成人告訴−−逮捕を過剰制裁(オーバーキル)と言う理由

 世論調査では六〇%を越えると、圧倒的多数と見なすのが普通である。では九〇%だとどうなのか。
異論など挟む余地のない「絶対多数」とでも呼ぶべきか。いずれにせよ、そんな世論が支配する世の中はこわい社会である。
 ところが近ごろ、その九〇%(以上)が頻出するのである。少年法改正賛成九一%(全国)、
田中康夫・長野県知事支持九〇%(長野県内)、高松市長の成人式をめぐる告訴支持九〇%(高松市内)といった具合に。
 少年法については、本誌読者中心の集まり(「言いたいことは山ほどある」)で私が会場に問うた限りでは、
世論調査とはきれいに逆転していた。つまり九対一ぐらいで反対だったが、残りの二項ではどうだろうか。
ここでは田中知事のことはさておくとして「成人式の乱」をめぐる大人の反応には本誌読者をふくめて
かなり同調傾向が強いのではないか。
 私がそう疑う根拠のひとつは、高松での告訴−−逮捕について、自分の番組で「オーバーキル」
(過剰制裁=「多事争論」のその日のタイトル)だと私が述べたことへの反応である。
抗議電話がとりわけ多い夜となり、賛成する意見はひとつもなかったようだ。
 さて、威力業務妨害罪という法曹家によってはかなり適用に疑義のある罪名で逮捕された五人
(うち十九歳ひとり)の内訳は防水工、塗装工、建設作業員、フリーター、会社員(知り合いの会社を手伝っていた程度らしい)。
「ガキどもを吊せ!」と思っている大人たちにとっては情状酌量の理由にはならないだろうが、ほぼ”3K職場”の顔ぶれである。
そのコンプレックスの暴発か、単なる自己顕示かはわからないが、一般的には若者がこういう突出を演じたがる時には
同年輩への自己誇示の心理が働くものである。つまり攻撃対象(この場合は市長)はむしろ「手段」であって、
「目的」は「オレたちはここまでやれるんだぞ」と同じ成人たちに誇示したかったのではないか。
高校卒、高校中退、中学卒の彼らが決して享受できない世界だが、大学生のコンパなどでもこの程度の乱痴気騒ぎはままある。
だが、ここでまた「法と秩序」派の大人たちは言うだろう。