458 :
朝日新聞3月23日号社説 1/2:
社説
全国紙では朝日・毎日のみ触れ、讀賣・日経・産經は扱わず。主な地方紙で、
ヤシン師殺害に触れた中日(東京)・北海道の社説を引用する。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html 03月23日付
■ヤシン師殺害――和平を打ち壊すのか
パレスチナ和平の道を根こそぎ打ち壊すような事件が起きた。
パレスチナ自治区のガザ市で、イスラム過激派組織ハマスの創設者である
アハメド・ヤシン師をイスラエル軍がミサイルで殺害した。ハマスは「無制限の報復」
を呼びかけ、怒りの渦はパレスチナのみならず、アラブ・イスラム世界を覆っている。
宗教指導者でもあるヤシン師の暗殺はイスラム世界に根付く聖戦意識を刺激し、
イスラエルとパレスチナの間の血の報復の連鎖を本格的な宗教戦争へと拡大して
しまう転機ともなりかねない。
確かに、ハマスはイスラエル人を標的にした多くの自爆テロを重ね、イスラエルは
そのたびに激しい報復を加えてきた。それでも、これまでイスラエルがヤシン師の
殺害をためらってきたのは、彼が反イスラエル闘争の英雄として、アラファト自治政府議長
をしのぐ影響力を持つ人物であることを無視できなかったからだ。
それがなぜ今踏み切ったのか。シャロン首相は交渉による和平に見切りをつけ、
ガザのユダヤ人入植地を撤収する構想を打ち出している。その前にハマスを
徹底的にたたき、テロの脅威をあらかじめ一掃しておこうという意図だったと思われる。
(続く)
459 :
朝日新聞3月23日号社説 2/2:04/03/23 16:38 ID:HDxaUAFW
>>458の続き
だが、結果は逆だろう。事件が対立の火に油を注ぎ込むことは間違いない。
過激派組織とはいえ、軍事部門以外のハマスの活動は社会福祉や医療、
教育などにわたり、イスラエルに抑圧されている人々の生活を助けている。
隣国ヨルダンはハマスの政治活動を認めてもいる。ヤシン師が掲げてきた
パレスチナの解放は、アラブ・イスラム世界全体の願望でもある。
そうした意味では、ハマスの活動をイスラムを利用して無差別テロを重ねる
ビンラディン一派と同一視はできない。
ヤシン師の殺害に対して、ストロー英外相が「無法な殺害」と言い切り、ポーランド
のチモシェビッチ外相が「車いすの人物を殺すことが安全にとって最善か」と批判
するのも、イスラエルの行き過ぎが中東和平全体を葬り去ることを恐れるからだ。
米政府も、イスラエル、パレスチナ双方に自制を呼びかけた。だが、ふたつの
国家の平和共存の実現を約束しながら、シャロン政権の政策を追認し続け、
ここまで事態を悪化させたブッシュ米政権の責任は重い。米国が公平な仲介役
ではないという不満が反米感情の高まりにつながり、イラクの再建を阻害すること
にもなりかねない。
シャロン政権は、パレスチナに対する攻撃を米国とともに進める対テロ戦争
と位置づける。一方で、パレスチナ国家との共存をめざすともいう。「テロには
テロで」を地でいくような手法に頼ることが、将来の和解につながるのだろうか。
事態はきわめて深刻だ。報復の輪が広がるのを防がねばならない。
国連安保理を通じて具体的な介入を急ぐべきである。
460 :
???:04/03/23 16:42 ID:pX9OhUWF
あのハマスの指導者って、全パレスチナの解放っていうことを主張して、
イスラエルの生存権を認めてなかったんでしょう?(w
イスラエルが生存権を主張することは当然予想できることだね。
461 :
毎日新聞3月23日号社説 1/2:04/03/23 16:43 ID:HDxaUAFW
http://www.mainichi.co.jp/eye/shasetsu/200403/23-1.html ヤシン師暗殺 強者の側から自制を示せ
パレスチナのイスラム原理主義組織・ハマスの精神的指導者、アハメド・ヤシン師
がイスラエル軍ヘリのミサイル攻撃で殺害された。新中東和平案(ロードマップ)
による和平プロセスが失速状態に陥っている中での今回の暗殺はパレスチナ情勢
を一段と悪化させるものだ。
ブッシュ米政権の主導の下で米国、欧州連合(EU)、ロシア、国連の4者が
まとめた和平案は05年にイスラエルとパレスチナの二つの国家の共存達成を
目標に据えた。それによれば、昨年末にはパレスチナ暫定国家が樹立される
ことになっていたが、現実はとてもそんな状態にはならなかった。パレスチナ人の
自爆テロとイスラエルの軍事報復、さらに報復攻撃と連鎖が繰り返されたからだ。
暴力を断ち切ることが和平プロセスの第一歩なのだが、今もなおそれが続いている。
イスラエルのシャロン首相とパレスチナ自治政府のアッバス首相(当時)は
昨年6月、ブッシュ米大統領の前でそれぞれ和平プロセス推進を明言した。しかし、
双方の間に信頼感は醸成されなかった。ハマスを含むイスラム原理主義組織が
一時停戦を発表し、イスラエルもパレスチナ人拘束者の一部釈放などを行ったが、
それ以上に双方の憎しみを助長させることが相次ぎ、ロードマップの先行きは
見えないままだ。
(続く)
462 :
毎日新聞3月23日号社説 2/2:04/03/23 16:44 ID:HDxaUAFW
>>461の続き
イスラエル側からすれば、ハマスなど武装組織取り締まりでの自治政府の
手ぬるさ、その結果として自爆テロを止められない事態は我慢できないことだ。
パレスチナ側からすれば、イスラエルによる西岸地区に入り込んだ分離壁の建設、
ハマス幹部への暗殺作戦を含む過剰なほどの軍事攻撃、アラファト自治政府議長
「排除」の閣議決定などは対話の道を閉ざすものと映る。その間にもブッシュ政権の
事実上の黙認の下に分離壁建設は強行され続けた。
ヤシン師が87年に創設したハマスはイスラエルとの共存を拒否し、軍事部門が
自爆テロを行う一方で、政治部門は医療など社会活動を展開し、草の根レベルでの
支持を得た。自治政府の非力さとイスラエル軍の攻撃激化がハマス支持を高める
要因にもなっている。
ヤシン師暗殺で今後の事態は予断を許さない。ハマスの自爆テロ作戦は国際社会
から支持を得られない。ハマスなどの組織を統御できない自治政府の不十分な
指導力は責められるべきだ。その一方で、イスラエルの軍事攻勢が自治政府の
行政の手足を束縛していることはないか。
警察力しか持たないパレスチナに対してイスラエルは軍事力で圧倒している。
それでも、これまでの経過は軍事力だけでは和平と安全が達成されないことを
示している。ロードマップを死文化させてはならない。局面打開には、強者の側に
より多くの自制を示すことが求められる。同時にイスラエル・パレスチナ双方に
影響力を持ちながら、イスラエル寄りに傾斜するブッシュ政権も公正な仲介者と
しての役割が問われている。
(毎日新聞 03-23-00:50)
463 :
???:04/03/23 16:46 ID:pX9OhUWF
イスラエルの生存権を甘く見ている社説が多いね。国家を再建して維持することが
どれだけ大変か分かっていない社説だね。
464 :
中日新聞3月23日号社説 1/2:04/03/23 16:47 ID:HDxaUAFW
http://www.chunichi.co.jp/sha/index.shtml 社説
(2004/3/23)
和平の出口閉ざす愚策
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの創始者ヤシン師が、イスラエルに
よって殺害された。和平の出口を閉ざすばかりか、イスラエル国民の犠牲者増も
招く愚かな戦略と気付かないのか。
ヤシン師殺害
今回の殺害計画についてイスラエル放送は「シャロン首相が直接命じた」と報じ、
ハマス側は「イスラエルのすべての家に死をもたらす」と報復声明を出した。
せっかくの新中東和平案(ロードマップ)も吹き飛んでしまうかもしれない。残念である。
イスラエル建国で難民となったヤシン師は、十五歳の時、事故で車いす生活と
なった。パレスチナ人の抵抗運動を契機に一九八七年、ハマスを創設。貧しい
難民救済や教育活動にも力を注ぎ、パレスチナ民衆には神のような存在だった。
そんな最高指導者をあえて標的にしたイスラエルの戦略には、一体どんな成算が
あるというのか。
パレスチナ側の自爆テロは容認できるものではない。が、イスラエルは和平破綻
(はたん)の責任をテロに押しつけ、国際社会も過剰と批判する報復作戦を展開してきた。
また、テロリストの侵入防止を名目に、コンクリートの分離壁建設を強行。国際司法裁判所
(ICJ、オランダ・ハーグ)による分離壁の違法性審理に対しても「ICJに権限はない」と
無視している。
(続く)
465 :
中日新聞3月23日号社説 2/2:04/03/23 16:48 ID:HDxaUAFW
>>464 今回の事件は、今月中旬からガザ地区で激化したイスラエル軍の侵攻とハマスの
報復の連鎖、そしてシャロン首相とパレスチナ自治政府のクレイ首相の初会談延期の
延長線で起きた。
シャロン首相は先月、外相時代の収賄疑惑で司法当局から聴取され、今月初め
イスラム過激勢力との捕虜交換にからむ疑惑も浮上、辞任圧力が強まっている。
今回の強行策は国内の疑惑をそらす狙いがあるのでは、との憶測も流れる状況だ。
中東不安定の根っこにあるパレスチナ紛争。これがヤシン師の殺害で最大の
危機を迎えているのは間違いない。
国際社会も事態を傍観してはならない。米国はイラクで続発するテロと、難航する
復興に戸惑って、パレスチナ問題に手をこまぬく。テロとの戦いという口実で、
イスラエルの暴走を黙認してきたのではないか。
ロードマップが破綻すれば、その責任は提唱者の米国にもあると言われても
致し方ない。今こそ真剣にイスラエルをいさめるべきだ。パレスチナを侵食し、
人々の生活を破壊する分離壁の撤去が急務と、説得する必要がある。
466 :
北海道新聞3月23日号社説 1/2:04/03/23 16:51 ID:HDxaUAFW
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0032 # ヤシン師殺害*暴力の応酬を懸念する(3月23日)
パレスチナ過激派の自爆テロとイスラエルの暗殺作戦という暴力の応酬が
ついに、のっぴきならない事態を招いた。
パレスチナのイスラム原理主義組織ハマスの創始者で精神的指導者
ヤシン師が、イスラエル軍に殺害された。
十四日に起きた連続自爆テロの報復としてイスラエル軍が行っていた自治区ガザ
での空爆の中で狙われた。
ハマスはイスラエルへ自爆テロを行う過激派である半面、パレスチナ住民への福祉、
医療活動に熱心に取り組み貧困層の幅広い支持を得ている。
過激派を評価するわけではないが、ヤシン師はアラファト・パレスチナ自治政府議長
と並ぶ存在だった。同師殺害がパレスチナ人の怒りに火をつけたのは間違いない。
イスラエルはパレスチナ人の憎悪の深奥にまで踏み込んでしまった。
自治政府のクレイ首相は「極めて危険な行為だ」と非難した。ハマス最高幹部
は「戦争への道が開かれた」と報復を宣言した。
イスラエルに対する大規模テロが頻発する恐れは十分にある。憂慮される事態だ。
イスラエルとパレスチナの全面対立を懸念する。米国はじめ国際社会は直ちに
仲介に乗り出し、暴力と流血の応酬を抑えてほしい。
(続く)
467 :
北海道新聞3月23日号社説 2/2:04/03/23 16:52 ID:HDxaUAFW
>>466より
昨年六月に合意された中東新和平案(ロードマップ)も崩壊のふちに立たされた。
ロードマップ第一段階の「暴力の停止」が実現しない背景には、パレスチナ過激派
取り締まりを自治政府に任せず、イスラエルが暗殺作戦を強行、報復の連鎖を
呼んでいることがある。
昨年六月にはハマスなど過激派が対イスラエル武装闘争の一時停止を
宣言した。しかし、イスラエルによるハマス幹部暗殺で二カ月で撤回した。
シャロン・イスラエル首相はブッシュ米大統領の論理を借用し、パレスチナ
過激派幹部暗殺作戦を対テロ戦争と位置づけている。
無差別テロは認められない。しかし世界中で大規模テロを仕掛ける国際
テロ組織と、占領に抵抗し領土回復を求めるパレスチナ過激派とを単純に
同一視できるのだろうか。
イスラエルはまた国際社会の批判に耳を貸さず、ヨルダン川西岸の自治区
との境に「分離壁」を建設するなど対立をあおる行動も取っている。
ブッシュ大統領はイラク問題で手がいっぱいかもしれない。だが、イラクも含め、
中東問題の根源にはパレスチナ紛争がある。米国はイスラエル寄りでなく、
公正な仲介者としてパレスチナ和平に取り組む責務がある。
そうしなければ、イラクもパレスチナも、文明の対立と未曽有の混乱に陥りかねない。