<<狂牛病関連情報蓄積スレ その18>>

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133AERA 10月7日号
◆◆農水省が触れないい狂牛病代用乳説 感染原因究明のでたらめ◆◆

  BSE(狂牛病)の感染経路はいまだに不透明だ。共通する代用乳説。
  その究明が進まない。畜産農家の怒りが高まる。

 農林水産省のでたらめさに真っ当な酪農家は憤慨している。
 北海道宗谷郡猿払村芦野の小泉浩さん(38)は最近、痴呆状態になって死んだ
10歳の乳牛を、農水省系の末端機関である地元の家畜保健衛生所にあえて運び込み、
狂牛病(BSE=牛海綿状脳症)の検査を受ける手続きをした。
 BSEなら、そうとはっきりさせて欲しい、と所有者に牛を持ってこられたのは、
この家畜保健衛生所では初めてだった。疑わしい牛は、家畜を処分する各種の法人
組織の「化成場(レンダリング)」などへ廃棄してしまう北海道などでの現場の通例
とは、逆のことがなされたのだ。 (続く)
134AERA 10月7日号:02/10/14 22:52 ID:EKaglU6E

◆迷宮入りでは将来なし
 これまでにBSEと発表された5頭とは違って、全国農業協同組合連合会(全農)の
子会社メーカーの代用乳を飲ませていなかったが、牛の症状からみて小泉さんは、
BSEの病原体の異常プリオン蛋白が脳から検出されるものと覚悟を決めていた。
農水省系の検査を信用するなら、結果はBSEではなかった。
 それにしても小泉さんはどうしてわざわざ、死んだ飼育牛にBSEの疑いがある
ことを開示してみせたのだろうか・
 「なにゆえに農水省は死亡牛のBSE検査を今なおやらないのか。重大な手落ち
ではないか。死亡牛からは(食肉用に処理される、健康とみられた牛の)20〜30倍も
BSEの患畜が(欧州では)発見されている。これによってBSEの広がりもつかめる。
しかし、農水省はそれをしない。日本でのBSEの汚染経路を究明する気が、そもそも
あの省にはないのではないか。地域によっては、疑わしい牛は検査しないで破棄させる
指導を農協自身がやっている」
 小泉さんの地元猿払村は、去年11月21日に日本で2頭目のBSE発生を確定され、
風評被害も含めて大騒ぎにさらされた。そんな土地なのに、怪しい牛は廃棄してしまう
今の風潮に小泉さんが断然対決したのは、BSEの感染源、感染経路がこのまま迷宮入り
してしまったら、日本の酪農への不信は去らず、その将来も危ぶまれる、と考えるからだ。

(続く)
135AERA 10月7日号:02/10/14 22:52 ID:EKaglU6E

◆疫学調査不在の異常
 小泉さんや同憂の酪農家、獣医師、その他の住民も加わって小泉さんの地元で昨年
12月に結成された「宗谷BSEを考える会」がこの8月9日、96年1月〜6月産の
乳牛を積極的に検査させよう、という趣旨の声明文を発表した。猿払村を中心に156人
の酪農家が署名した。
 現在までにBSEと確定された5頭とも乳牛で、誕生したのは95年12月5日から
96年4月4日までの間だ(前記の生命は95年12月生まれの5頭目が明らかになる
前に出された)。
 従って、この時期かその前後に生まれたそれも乳牛にBSE患畜は出そう、との不安が
畜産地帯には強いが、この関係の牛は、もう一両年かそこらでたいてい廃用となる。
しかし、食用に回すとBSEの検査をされるので、それを避け、病牛、死亡牛としたり、
何らかの口実を作ってレンダリングへ廃棄してしまう恐れがある。
 いまでも、不安が持たれる廃用牛は、酪農家が獣医師と相談し、例えば、「乳房炎、
関節炎で抗生物質を投じたので食用に不可」などとしてレンダリングに送っている。
 「宗谷BSEを考える会」は、そうした証拠抹殺はなんとしても防ぎたいのだ。酪農家
たちは、芦野酪農振興会という東宗谷農業協同組合系の組織からぬけ、この「考える会」
をつくった。酪農家で会長の田中滋久さん(43)は述べる。
 「(農協系の)既存の会に所属していると、真実を語れなくなる」
 一方、獣医学の分野でも疫学、毒性、病理などの研究者の間で、感染源、感染経路
究明の農水省のやり方に疑念が高まっている。

(続く)
136AERA 10月7日号:02/10/14 22:53 ID:EKaglU6E
◆検査命令の先延ばし
 財団法人日本生物科学研究所理事・主任研究員で、1980年代からのイギリスでの
BSEの発生と拡大、その後の欧州大陸への伝播に詳しい山内一也氏は、日本での
BSE発生を解明する疫学研究班を、農水省が今盛って編成しないことを極めて不自然、
とみる。
 「感染源の究明に疫学研究者が関わっていない。なぜ疫学調査をやらないのか。
3月の中間報告(今年3月15日付で農水省が作成した『牛海綿状脳症(BSE)の
感染経路の調査について−第2次中間報告−』)を見ても、疫学研究者の考察がどこ
にもない。日本には優秀な疫学研究者がいっぱいいるのに」
 山内氏も指摘するように、日本には富山県の神通川下流域で発生したイタイイタイ病、
熊本県の水俣湾周辺と新潟県の阿賀野川下流域での水俣病、三重県四日市地区の喘息、
日本各地で激発したスモン(亜急性脊髄視神経症)などの原因、実体の解明に、病の
発生状況を多角的に解析して原因を絞り込んでいく疫学が大きく貢献した経緯があるが、
BSEではこの優れた科学の伝統が断絶させられている。暴騰の小泉さんが農水省の
不作為をいかぶった死亡牛の全頭検査は、この場合の疫学調査の本筋に属する。

(続く)
137AERA 10月7日号:02/10/14 22:53 ID:EKaglU6E

 実は今年7月4日に牛海綿状脳症対策特別措置法というものが施行され、その第6条で
死亡牛のBSE検査が都道府県知事に、幾分曖昧な表現ながら義務づけられはした。
 農水省令で決める月齢以上の死亡牛は、担当した獣医師が都道府県に「届け出なけれ
ばならない」と、そして知事は死亡牛の所有者に対して、所要の検査を受けることを
「命ずるものとする」と定められた。
 日本における牛の飼養頭数は、農水省によると、いま450万頭台で、年間にうち
15万〜16万頭が死ぬ。BSEが発生しそうな24ヶ月齢以上の死亡牛はこの半分の
7万〜8万頭くらい、という。特別措置法で死亡牛のBSE検査の対象になるのは24
ヶ月齢以上なので、毎年7万〜8万頭がこの全頭検査に該当する。
 しかし、特別措置法のなかの都道府県知事の検査命令に限っては、施行がこの7月4日
ではなく、2003年4月1日に先送りされた。しかも、知事の検査命令には但し書きが
付いていて、農水省令で決める地理的条件などによって、BSE検査をうけるのが難しい
場合は、そもそも検査命令を出さなくていいことにされた。その猶予期間はどのくらい
許されるかも、まだ決まっていない。
 この法律は、与野党共同提案の議員立法だが、農水省側が作成に加わっているなかで
この結果になっていった。
(続く)
138AERA 10月7日号:02/10/14 22:54 ID:EKaglU6E

◆「態勢整わず」繰り返す
 農水省研究職の出身で民主党の鮫島宗明衆議院議員はこうみる。「表面は死亡牛の
検査を義務づけながら、地域によっては、引っ掛からないように、ただし書きで実質的に
空洞化してしまった。(今のところ96年前後の産の乳牛にもっとも疑念が持たれているが)
2004年ごろまでには、この疑惑牛はほぼ絶滅します。感染経路の究明を農水省は
意図的に避けた、と考えるほかない。民間企業は(BSE対策の国産牛肉買い上げで)
偽装し、二次的な混乱に巻き込まれたたかれたが、本当の『悪』には逃げられた」
 鮫島氏は続ける。
「いかに感染経路の解明をしないで済ませるか、行政の焦点は初めからそこにあったと
見られても仕方がない。BSEの発生直後から私は死亡牛のことを言い続けてきた。しかし
農水省は、BSE牛が全部死に絶えて消えるまで、死亡牛の検査はやりたくないんでしょう。
ただ、その結果、日本にはBSEは5頭(9月26日現在)しかいなかったという歴史的
記録が残る。真実を知る勇気も科学心もない国だった、ということも」

(続く)
139AERA 10月7日号:02/10/14 22:54 ID:EKaglU6E

 先の山内氏によると、ドイツの中でもBSEが多発したバイエルン州の場合、病牛・死亡牛
でのBSE検出率は、食肉処理場での健康牛の20倍、という。関係研究者たちによると、
BSEの疫学調査で書かせない一つが、前記のように、BSEが高率で発見される可能性の
あるこの死亡牛検査なのだが、特別措置法は、それをほとんど無意味にしてしまう恐れがある。
 国会での答弁、ないしは取材に対して農水省側は、死亡牛の全頭検査のためには新しい施設、
要員などの整備、確保が必要なことを、早急にそれに着手できない理由として挙げる。
 死亡家畜などを処理する既存の関係施設、要員、システムでは死亡牛の全頭検査にはとても
対応できない、と主張する北海道庁側の立場を農水省は強く押し出す。確かに、死亡牛のほぼ
半分は北海道に集中しているという特殊事情はある。
 しかし、既存の施設を活用したりしても実施できないのか、検査の要員にしても、協力を
惜しまないという厚生労働省に助けを求めたらいいのではないか、という疑問がわく。
(続く)
140AERA 10月7日号:02/10/14 22:54 ID:EKaglU6E

◆欠かせない全頭調査
 農水省と北海道農政部側は、設備の不足など早急着手の困難さを細かく挙げるが、緊急
事態なのに、既存のものをいかに活用するかといった臨機の着眼がそもそも感じ取れない。
 いま現在、日本でのBSE発生に関して明確な点、不明な点を整理すると、こうなる。

●BSEの発生経路は、日本でも欧州と同様に、異常プリオン蛋白で汚染された肉骨粉、
動物性油脂、その他の飼料原材料、とみられる。どの原材料であっても、輸入と国産の
いずれが原因かは分からない。国産とすると、海外からの肉骨粉などによって日本でも
比較的早い時期にBSEが発生していて、それが国内で肉骨粉などにされ、異常プリオン
蛋白が増幅されていた、ということになる。山内氏は、その可能性も無視できない、とみる。

●牛のBSE罹患は2歳までの若齢期の可能性が高い。その点で、全農の子会社の株式
会社科学飼料研究所高崎工場製の代用乳が5頭のいずれにも与えられていた事実は見落と
せない。その原材料に、株式会社群馬県化成産業などの国産牛脂、そしてオランダ産牛脂が
含まれていた。国産、オランダ産にかかわらず牛脂が、牛の脳などの異常プリオン蛋白で
汚染されていた可能性を否定し切るのは難しい。そして、これまでの5頭に関する限り、
科飼研高崎工場の製品販売地域の東日本でのみ発生している。

●1980年前後と推定される時期から北海道を中心に多発していたスクレイピー(やはり
異常プリオン蛋白が原因とみられる羊の海綿状脳症)の羊が肉骨粉にされていた事実が
あるが、スクレイピーと日本でのBSE発生の関係はまだ不明だ。
 英国では、代用乳に続くいわば離乳食の「スターター」(日本では人工乳とも呼ばれる)
への肉骨粉投入がBSE激発の有力な原因になった、と考えられている。それで、山内氏は、
「スターター」のような若齢期の飼料全般に注目する。生産工程で鶏・豚用途の肉骨粉が
混ざる交差汚染がなかったかどうか、と問う。
 中枢神経症の牛をできるだけサーベイランス(BSE発見事業)の対象にしたり、96年
3、4月誕生の牛を任意で買い上げたりする事業も農水省は実施しているが、しかしやはり
死亡牛の全頭検査こそが欠かせない。

(続く)
141AERA 10月7日号:02/10/14 22:55 ID:EKaglU6E

◆「大損害」でも真実を
 前記の「宗谷BSEを考える会」の会長田中滋久さんは語る。
「日本におけるBSEは、農水省が犯した畜産での薬害エイズそのものです。その責任を
明確にするためにも、発生に至る経路を究明しなければならない」
 これまでのBSE患畜5頭の各酪農家は、平均して同居牛の約80%を疑似患畜とされ、
BSEは陰性だったがすべて殺処分された。各種の補償措置はあっても経営再建に苦しい
月日を過ごさなければならない。
 前記の小泉浩さんは80頭、田中滋久さんは180頭を飼っている。積極的にBSE
検査を受け、陽性となったら小泉さんも田中さんも、所有牛のほとんどを失う恐れがある。
 それでも2人、そして「宗谷BSEを考える会」は、日本でもBSE発生の真実を明確に
することこそ何より優先されなければならない、とみる。
 国産牛肉を偽装したからといって、法律上の根拠もないのに農水省は、関係メーカーの
営業、人事にまで介入する職権乱用を繰り返すが、日本でのBSE発生経路を絞り出し、
自分らのそもそもの責任を明確にする最重要時には背を向ける。2001年度の消化分、
2002年度の予算と合わせて3544億円もの余計なBSE関連対策事業費を、財政
破綻のなかで蕩尽しながら、こうなのだ。(終わり)

Asahi Simbun Weekly AERA 2002.10.7 編集部 長谷川 熙