【崩壊】日本の治安【寸前】

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68謝罪と補償
【治安】襲来する事件(3)「カネ」への執念 数年“働けば”郷里に御殿
[2002年05月04日 東京朝刊]
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 「福建の連中は私たちの四、五倍の手数料を払って日本に密航してきている」
 「摘発される来日中国人の中で、なぜ福建省出身者が多いのか」と尋ねると、
上海出身の男性は流暢(りゅうちょう)な日本語で話し始めた。スーツ姿で一見
して中国人青年実業家風だが、彼自身も不法滞在者。不良中国人を手配し、あら
ゆる犯罪をコーディネートするという彼はこう続けた。

 「福建省出身者の故郷は貧しい漁村で、未舗装の道にれんが造りの長屋が並ぶ。
そこに突然、三、四階建ての豪邸が建つ。『日本へ出稼ぎに行った二男の送金で
建てた。東京で三、四年間働けば、故郷で稼ぐ十数年分の金を手にできる』。こ
んな話を聞いた村の若者たちはすぐに密航話に飛びつく。密航費用は、近代化が
進み仕事も多い上海では五、六十万円程度だが、彼らは二、三百万円でも払う」

 借金をしてまで日本にやってくる。しかし、資格も技術もない彼らに、不景気
の日本で仕事があるはずがない。膨らむのは密航費用に借りた金の金利ばかり。
毎日カップラーメンしか食べられず、故郷より惨めな暮らしをしている人間も多
いという。そういう彼らは、分け前がわずか一、二万円の強盗話を持ち掛けられ
ても断らない。

■冷蔵庫内まで
 彼らの犯罪は、徹底した金への執着が際立つ。
 平成十二年の暮れ、それを象徴する事件が起きた。東京・柴又の歯科医師宅の
緊縛強盗事件で、犯行グループは現金約三百万円や四千三百万円相当の貴金属に
加え、散弾銃六丁とライフル銃一丁、実弾約五十発を奪った。

 一週間後、一人の中国人ブローカーの携帯電話に、ある福建省の男から連絡が
入った。「ライフルや猟銃が流れているんだが買わないか」。しかし、事件の被害
品と直感したブローカーはさばきようがないため、「ブーヤオ(不要)」と即答し
た。結局、七丁の銃は川に捨てられた。

 「前にピッキングであの家に空き巣に入ったやつがいた。ケースに入った高そ
うな銃を見つけたが、厳重に鍵がかけてあった。そいつは、その情報を仲間に売
ったうえ、大人数で強盗に戻れば、もっと稼げると思っただけ」。ブローカーは
笑いながら話す。銃を使った凶悪な二次犯罪を警戒した警視庁の過剰反応とは裏
腹に、彼らは単に「金になる」と盗んだだけだった。

 空き巣や強盗に入れば、部屋にある物は手当たり次第に盗む。現金や貴金属な
どのほか、衣類や靴まで盗まれるケースも多い。中には冷蔵庫の中まで荒らされ
た例もあるという。そうした盗品は闇の販売ルートで処分される。

 「絶対に稼ぐ」。彼らには罪を犯す罪悪感は希薄で、ビジネスとしての意欲さ
え感じる。