<<狂牛病関連情報蓄積スレ その7>>

このエントリーをはてなブックマークに追加
71
【社説】狂牛病と食品行政 追跡システムの徹底必要 (熊本日日新聞)
http://www.kumanichi.co.jp/iken/iken.html#20020105_0000002343

 昨年、国内を襲った狂牛病(BSE、牛海綿状脳症)騒ぎは感染源解明が進まないまま年を
越した。大きな打撃を受けた畜産王国熊本の生産者にとっても、消費者の信頼をどう取り戻す
か転機の年になる。
 暮れに開かれた「BSE問題に関する調査検討委員会」で農水省は、日本でも狂牛病発生の
危険が高いとした欧州連合(EU)のリスク評価報告書案を初めて公表。同省の危機意識の薄
さが浮き彫りになった。
 検討委では、感染源とされる輸入肉骨粉の牛のえさへの使用を実効性のない行政指導にとど
めた農水省の対応についても検証。九六年四月の審議会で法的規制を訴えた専門家二人の意見
を一昨年末まで放置した事実も明らかになった。
 消費者の牛肉離れの深刻化に行政不信が輪をかけたのは間違いない。畜産局長時代を含めて
、対応の不手際を指摘された事務方トップの熊沢英昭事務次官が事実上の更迭に追い込まれた
のは当然だ。
 既に政府は肉骨粉の製造販売を禁止。十月十八日からは全頭検査を実施して汚染肉の市場流
通を阻止する態勢を整えた。国内すべての牛に個体番号を付ける「総背番号制」作業も県内で
は今年から本格化。出生地や移動歴もデータベース化し生産から流通までを管理、迅速な防疫
対策をとるためのシステムである。
 だが一方では、狂牛病などの食品汚染発生の危険をゼロに近づける予防措置や、海外産飼料
に過度に頼るなどの畜産経営の見直しも今後せまられよう。
 食品の安全を保証する衛生管理対策では欧州にモデルがある。農林中金総合研究所の蔦谷栄
一・基礎研究部長が最新の論文(「農林金融」12月号)で紹介しているデンマークの取り組
みも大いに参考になる。
 わが国に大量の豚肉を輸出している同国の安全対策の特徴は(1)生産から消費者の口に入
るまでの徹底した衛生管理(2)農畜産物の履歴を記録し問題発生時にさかのぼれる追跡シス
テムによる透明性の確保だ。
 生産現場への獣医の密接な関与は特筆される。家畜用の薬品は獣医の許可なくしては使用で
きないよう法律で規制。解体後、問題が発生した場合でも、解体工場でつけた表示で生産者と
担当獣医までわかる。
 違反行為があれば法廷で裁かれると同時に、違反行為自体が「恥ずかしいこと」と受け止め
る社会的風潮が既に形成され、レストラン等でも厨房の衛生確保のため年四、五回もの抜き打
ち検査があるという。
 デンマークは家畜福祉も充実。快適で平穏な環境をつくることが家畜の病気を減らし、おい
しい肉の生産にもつながるとの考え方だ。豚の場合、飼養施設の一頭当たりの所要床面積を発
育順に定めたり、と畜前には豚に一時間の休息を与えるといったことまで法律で規定。家畜の
生理を重視した畜産経営は、わが国も見習う点が多いはずだ。
 デンマークは農業、厚生、漁業三省を統合して獣医食品局を新たに設置、縦割りの弊害をな
くす措置もとった。BSEの検討委で、農水、厚労両省の分担が分かれすぎ、政策に一貫性が
ないと批判された日本とは大きな違いである。
 もちろんデンマークも食品スキャンダルと無縁ではない。九六年の狂牛病騒ぎの際は市場崩
壊の危機感も生まれたが、近年は消費者の過敏な反応は薄らいだ。時間はかかっても徹底した
衛生管理の積み上げがいかに重要かということだろう。
 狂牛病問題は、生産者や加工、流通業者には降ってわいたような災難だが、食の安全を考え
直す好機ともしたいものだ。蔦谷氏も指摘するように流通の短縮化や地産地消の見直し、地域
レベルでの自給化も必要だろう。阿蘇草原の粗飼料を多く使った産山村の「さわやかビーフ」
が消費者の支持を得て売り上げを伸ばしているという好例もある。