敗軍の将、兵を語る 遠藤武彦氏(農林水産副大臣、農水省狂牛病対策本部長)
狂牛病騒動、危機感足りなかった
http://www3.ocn.ne.jp/~entake/html/kyougyuu_kiki.html 狂牛病騒動の初期の対応に不手際があったことを認め、国民に陳謝する。
「官の不作為」とまで言われる農水省の疑問にも、すべて答えた。対策費が
税金の無駄遣いにならぬよう、省を挙げて取り組むと宣言する。
今年9月、日本で牛海綿状脳症(BSE)、いわゆる狂牛病にかかった乳牛が確認されました。
英国など欧州における発症例はありましたが、アジアでは初めてのことでした。大変深刻な事
態だと受け止めております。
まずかったのは、発症の可能性が出た時、農林水産省などが取った初期動作に不手際があっ
たことです。それでなくとも国民が不安に陥り、神経質にならざるを得ない問題です。
そうした心配を、我々が素早く拭うことができなかった。国民の皆さまにはここに、深くお
詫びいたします。今は、一刻も早く感染ルートを突き止めるとともに、日本において大きく揺
らいでしまった食への安心を取り戻したいと思っております。
○最悪のケースを想定できず
日本で狂牛病が確認されることは、あり得ない、起こり得ないことと国民の多くが思ってい
たと思います。残念ながら、農水省もいつか起こるに違いないという構えでいたとは言い切れ
ません。
最近でこそ私も「今日の牛の検査結果はどうだっただろう」と、上がってくる報告には細心
の注意を払っています。しかし、この騒動が起こる前から、大いなる危機意識を持っていたか
と問われればそうではない。
私が、農水副大臣になったのは、小泉内閣が発足した時です。当初、私の頭の中にあったの
は恐らく、今年秋から始まる農業の構造改革をいかに進めていくかとか、これを政府全体の改
革プログラムにどう乗せるかといったことでした。そこに、狂牛病という懸念は薄かった。政
治家というものは、最悪のケースを常に頭に描いておく必要がある。ですから今、大いに反省
しているところです。
事の発端は、今年8月初旬のことでした。
千葉県白井市にある酪農家で、「どうも、この牛おかしいぞ」ということになり、家畜共済
連(千葉県農業共済組合連合会)の獣医師に見せました。そこで、もう治すことはできないと
診断され、その牛を8月6日に食肉処理場へ送ったのです。
そこでの検査結果は、「敗血病」でした。まさか狂牛病だとは疑わなかったのでしょう。そ
の後、千葉県側が不信な点を発見したため、改めて診断をしてもらったら、狂牛病の疑いがあ
るとの結果 が出たのです。
これを受けて9月10日、即座に農水省が記者会見を開きました。しかし、この記者会見がま
ずかった。問題の牛を既に焼却処分したと断言してしまったのです。
狂牛病の病原体は、異常型プリオンと呼ばれるものと言われます。そして、このプリオンを
何らかの形でほかの牛が接種することで感染すると聞く。こうした異常型プリオンの運び屋が、
皆さまも最近耳にすることが多い肉骨粉だということが、世界共通 の認識となっています。
ただし正確な感染ルートは、いまだ不明な点が多いようです。
問題となったのは、狂牛病の牛を焼却せずに、実は肉骨粉にしてしまったことでした。国民
の混乱を避けるため、故意に事実と違うことを会見で申し上げるはずもない。そこには、とん
でもないミスがあったのです。
まず、廃棄処分というのを、はなから焼却と思ってしまったことです。農水省のマニュアル
には、狂牛病の疑いのある牛は焼却処分することになっています。そこで、廃棄を焼却と思い
込んでしまったのではないでしょうか。
実際に焼却したのは頭部だけでした。胴体部分は通常のレンダリング(肉骨粉製造)業者に
送って、肉骨粉にしてしまった。