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狂牛病を巡る資生堂の絶対タブー(2):
ところが、である。驚くべきことにこの「脳」を使用した製品に対する厚労省の「リ
スクのクラス分類」はなぜか最も危険度の低いカテゴリーに分類されているのだ。
ちなみに厚労省がリスクのクラス分類別に決定した指導内容は、最も危険度の高い
『イ』のカテゴリーが「ただちに製品を回収すること」、次に危険度の高い『ロ』が「す
みやかに製品を回収すること」、最も危険度の低い『ハ』が「できるだけ早く原材料を切
り替えること」である。
そして「脳」を使用した製品は、危険度の最も低い『ハ』になっているのだ。
例えば、化粧品に多く使用されている『胎盤』の分類は危険度の高い『ロ』だ。胎盤は脳
に比べて危険度の低い部位とされている。にもかかわらず、厚労省の分類においては、逆
に脳より危険ということになっているのだ。
中堅化粧品メーカー関係者もこう指摘する。
「化粧品メーカーにとって、これはまさに死活問題です。イとロの場合はいずれもすべて
の製品の回収をしなければならないが、ハの場合は既存の製品については回収の必要がなく、
新規の製品についてのみ安全な原料に切り替えればいいとされているんです。回収に伴う
損害を考えると、イとロは地獄、ハは天国ですからね。厚労省が採用している欧州の基準で
も、脳は最も危険度の高いカテゴリーT、胎盤は次に危険度の高いカテゴリーUに分類され
ています。が、日本の厚労省が化粧品などについて試算すると、脳は甘いハの処分、胎盤
は厳しいロの処分になってしまうんです」
つまり、この関係者は「厚労省が業界トップの資生堂を保護するため基準に手心を加え
て、意図的に胎盤より脳の危険度を低くした」といっているのだ。実際、厚労省が作成
した「BSEに関するリスクのクラス分類表」を見ると、最もリスクの高い状態を1と
した場合、イのカテゴリーのリスクは1万分の1から100万分の1、ロのリスクは1億
分の1、ハのリスクは100億分の1とされている。要するに、厚労省は最も危険度の高
い脳を使用した化粧品のリスクは脳の次に危険度の高い胎盤を使用した化粧品のリスクに
比較して100倍も安全であり、したがって今後の原料だけを切り替えるハの処分でかま
わないと判断しているわけだ。
その根拠として挙げられるのは、化粧品に牛の部位を使用する場合、脳と胎盤ではその
使用方法に大きな違いがあるというものだ。
胎盤の場合は「プラセンタ」という化学物質を胎盤そのものから抽出し、化粧品に使用
している。
一方の脳の場合、保湿硬化を持つ「ヒアルロン酸」という化学物質を、牛の脳を培地に
して、ある菌を増殖させ精製している。ヒアルロン酸は鶏のとさかから抽出することもで
きるが、コストがかかり過ぎるという難点があった。資生堂はこの難点を牛の脳を培地に
することでコストを15分の1にすることに成功した。これが特許を取得した製法だ。
このような製法の違いから、プラセンタが「牛の胎盤を原料」あるいは「胎盤抽出エキ
ス」などとダイレクトに表現されているのに対し、ヒアルロン酸は「牛の脳に由来」など
と婉曲的に表現されているのだ。