▽狂牛病:有機肥料に余波 年明け大幅不足の恐れ 農家は悲鳴
http://www.mainichi.co.jp/news/flash/shakai/20011231k0000m040083000c.html 狂牛病(牛海綿状脳症)問題の影響で、牛の「骨粉」で作った有機肥料が、新年以降に大幅
に不足する恐れが出てきた。牛の骨が混じっている可能性のある骨粉の生産、輸入が10月に
全面的に禁止されたためだ。関連業界からは「肥料に使うだけなら安全なのに、一律に禁止す
るのは過剰反応だ」と不満の声が上がっているが、消費者団体などには慎重論も強く、なかな
か解禁に踏み切れないのが現状だ。
骨粉は、解体処理した家畜の骨を高温高圧で処理して乾燥させ、砕いて作る。リンを多く含
む安価な有機肥料として年間11万トンが使われてきた。肉骨粉と違ってもともと脳などの特
定危険部位は含まれず、専門家の間では「(狂牛病の病原体とされる)異常プリオンが土を通
して植物を汚染することはあり得ない」と言われている。
しかし、農水省は10月4日、製造過程で牛の骨が混入する恐れのある骨粉の輸入、製造、
出荷を禁止した。ほとんどの工場では牛から骨粉を作るラインと鶏や豚を原料にするラインを
分けていないため、骨粉が製造できなくなった。
このままでは春に使う有機肥料が不足し、有機栽培の農家などに大きな影響が出る恐れも
ある。このため農水省には各地の農協や農家から「骨粉を使えるようにしてほしい」との陳情や
要望が次々と集まっている。
兵庫県尼崎市の配合肥料メーカー「大和肥料」の安保謙作社長(69)は「糖度の高い果実や
高級な野菜、コメを生産するために骨粉は不可欠。今のままでは、日本の農業の活力が低下
する」と指摘する。
東大阪市の有機肥料輸入卸業「T・C・タカダ」の高田明二社長(68)は「牛から作るか
らといって、一律に禁止されてはたまらない。農水省は対処方法を見失っている」と怒る。
しかし、消費者には「特定危険部位が混じる恐れはないのか」「肥料が風で牧場に飛んでいく
可能性がある」などの懸念が強い。25日に開かれた農水省のBSE(狂牛病)対策検討会でも
和田正江委員(主婦連合会会長)は「全頭検査で(肉は)大丈夫ということになってきたのに、
懸念のあるものを解禁する必要はない」と述べた。
全国消費者団体連絡会の日和佐信子・事務局長は「消費者には農水省への不信感がたまって
いるので、いくら『骨粉は安全』と言われても信用できなくなっている」と話した。
【狂牛病取材班】[毎日新聞12月31日] ( 2001-12-31-03:01 )