<<狂牛病関連情報蓄積スレ その6>>

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【社説】農水次官の辞任 まだ遠い信頼の回復 '01/12/26 (中国新聞)
http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh01122601.html

 農水省の熊沢英昭事務次官が一月八日付けで退任することになった。熊沢氏は一月に次官に
就任したばかり。武部勤農相は狂牛病問題による退任との見方を否定しつつも、この問題に対
する熊沢氏の危機意識の甘さを考慮したことを認めている。熊沢氏は畜産部長や次官としてわ
が国の狂牛病問題に最も深くかかわってきた。狂牛病を未然に防げなかったための事実上の引
責辞任と見て差し支えない。
 しかし、武部農相自身「意識の希薄さは農水省全体の問題」と指摘しているように、問題の
根は深い。裏付けのない自信過剰や、前例踏襲の事なかれ主義が背景にある。襟を正してそう
した体質の改善に努めない限り、すべてが免責されることにはならない。
 また農相は「その場しのぎで人を代えることが正しい責任の取り方ではない」とも言ってい
る。自らの進退を語ったものだが、一向に農水省への不信感が払拭(ふっしょく)できない昨
今、まるで人ごとのような感じを受ける。不信感を増大させた責任をだれかに取らせて一件落
着とする「政治的幕引き」に終わらせてはならない。
 熊沢氏の狂牛病問題とのかかわりは一目瞭然(りょうぜん)であり、引責辞任は当然といえ
る。典型例の一つは、一九九六年に世界保健機構(WHO)が求めた肉骨粉の使用禁止勧告を
農水省は事実上無視したこと。同氏はその時の畜産部長だった。肉骨粉は狂牛病の有力な感染
源だとWHOが認識したからこその勧告だったが、「牛には肉骨粉を与えない」との行政指導
にとどめた。
 もう一つは、今年六月に欧州連合(EU)委員会が「日本の狂牛病危険度」に関して「感染
の可能性がある」とする報告書をまとめようとした際、農水省は激しく抗議して報告書の作成
を断念させた。熊沢氏は同省トップの事務次官だった。
 WHOの勧告通り法的禁止に踏み切っておれば今日とは随分違った展開になっていたと、熊
沢氏の対応の甘さを批判する声がいまだに根強くある。また、EU委員会と激論を続ける一方
で、同氏は国民に繰り返し「日本の安全性は高い」と訴えた。だが、わずか二カ月後にわが国
初の感染牛が見つかり、国民の農水省不信に火を付ける結果になった。責任は重大である。
 しかし、熊沢氏がこれだけ強硬な姿勢を貫いたのは、担当のセクション、さらには同省全体
に肉骨粉に対する認識の甘さがあったからだ。同氏の「日本の安全性は高い」発言にさしたる
根拠がなかったのは結果が証明している。先進情報を取り入れない「おごり」や縄張り意識が
全体の目を曇らせたわけで、責任を熊沢氏に押しつけて済む問題ではない。
 狂牛病の疑いのある牛を「焼却した」と農水省が宣言しながら、その実、飼料用の肉骨粉に
なっていた不手際も国民は忘れていない。畜産農家などに出荷されていなかったとはいえ、事
実も確かめずに発表をした同省への不信感が決定的になった。「食の安全」に敏感に反応する
国民と行政との意識の落差をどう埋めるか、明確な指針は示されていない。肝心な信頼感を取
り戻すために農水省が取り組む課題は山積している。