「週刊文春」 2001/12/06
元船員の告発!『私は疑惑の肉骨粉を闇ルートで北海道まで運んだ!』 から。
農水省には、さらに重大な落ち度がある。
まず、羊の「狂牛病」であるスクレイピーの続発実態を、まとめて一般に知らせていない事
実だ。スクレイピーの羊肉を食べた牛が狂牛病を発症したケースは、すでに欧州で確認されて
いる。
日本でのスクレイピーの発生は、農水省の数字では五十七頭となっている。しかし、前出の
松井教授は「実際はその数倍に達するのではないか」と見る。さらに深刻なのは、羊のスクレ
イピーが、日本で家畜伝染病予防法の定める家畜伝染病とされたのが、わずか四年前の九七年
ということである。
「それまでは、スクレイピーの羊が見つかっても、その処理は農家まかせにされていました。
そのため、ほとんどの羊はレンタリング業者に運び込まれ、豚や牛と一緒に肉骨粉になってし
まいました」(松井教授)
品川教授の「家畜のプリオン病・スクレイピー早期診断法の開発」というレポートの中にも
「牛海綿状脳症(狂牛痛)発生は羊のスクレイピーの特殊なプリオン株が飼料を介して牛に感染
したと考えられる」とあり、スクレイピーが狂牛病を引き起こした、というのが専門家たちの
定説だ。だが、農水省は驚くべきことに、スクレイピーのことには触れないように研究者たち
にクギを刺していた。
農林水産省の”隠蔽工作”
厚労省の諮問機関「BSE問題に関する調査検討委員会」委員長である、日大生物資源学部・
高橋正郎教授は、十一月十九日の同委員会初会合で、農水省の”隠蔽工作”を次のように暴いた。
「英国を中心にBSEが問題になっていた一九九一年、国内の研究者が狂牛病について警告する
講演をした翌日、農林水産省の横浜動物検疫所の所長が『狂牛病に関する話題は、今後触れな
いでほしい』などと、同研究者にクギをさしていた」
高橋教授の語によると、農林水産省からクギをさされたのは、同じ日大の畜産経済学を専攻
している研究者。食肉関係の業界団体が主催した研究会の場で、当時、羊の病気スクレイピー
の発生が増えていたシカゴから子牛を生体で輸入する危険性を指摘した。すると、講演の翌日
、当時の横浜動物検疫所の所長から研究室に電話があり「今の時点では、狂牛病の原因物質は
不明で、治療法や予防措置がない上、狂牛病の広がりが日本におよぶかどうかは分からない。
狂牛病に関する話題は今後触れないでほしい」と語したという。
これに対して農水省畜産部は「事実関係を確認したいが、研究者に対して、発言しないよう
に求めることは通常ない」としているが、これまで食言をくり返した同省の言葉を、にわかに
信じることはできない。
もう、日本の農水省、厚労省には何も期待できない。
http://www6.plala.or.jp/X-MATRIX/data/bunsyun20011206y.html