幕末に盛り上がった攘夷思想の
反動で明治初期の西洋文化輸入ラッシュが起こり,その反動で明治後期にはナシ
ョナリズムが台頭する.そしてそのナショナリズムの異常な高揚の反動として大
正デモクラシーのうねりが起こり,この反動が昭和戦前期のナショナリズムの台
頭である.そしてまた,その反動として戦後は[民主主義][平和主義]絶対の
時代が訪れた.つまり思想家が時代を変えるのではなく,「時代をリードした」
と言われる思想家は時代にうまく乗ることが出来ただけなのではないか.従って
世渡りのうまい人間,触覚の発達した人間は時代の変化に敏感にコロコロ思想を
変える.例えば住井すえや家永三郎のようにかつてはヒステリックに戦争を煽っ
た人間が,戦後は平和主義者として自分を変身させるのである.一方,そんなに
うまく立ち回ることの出来ない人間は,時代の荒波をかぶってひどい目にあった
りする.戦前アカだ何だと叩かれた津田左右吉は,戦後になっても意見をまった
く変えなかったため,いきなり“右翼”になってしまった.