最高裁がDNA鑑定の証拠能力認める
栃木県足利市で一九九〇年、四歳の女児が殺害された事件で、殺人やわいせつ目的誘拐などの罪に問われた元幼稚園バス運転手・菅家利和被告(53)の上告審で、最高裁第二小法廷(亀山継夫裁判長)は十八日までに、被告側の上告を棄却する決定をした。菅家被告を無期懲役とした有罪判決が確定する。
裁判では、被告のものとされる体液のDNA型鑑定の証拠能力が最大の争点となったが、同小法廷は「鑑定は科学的に信頼できる方法で実施されている」と述べ、鑑定結果を証拠採用した二審判決を支持し、最高裁として初めてDNA型鑑定の証拠能力を積極的に認めた。
一、二審判決によると、菅家被告は九〇年五月、同市内のパチンコ店駐車場で遊んでいた女児に声をかけ、車に乗せて同市の渡良瀬川河川敷まで連れて行き、首を閉めて殺害。遺体は近くの草むらに捨てた。
事件後、栃木県警は、菅家被告が出したごみ袋から体液が付いたティッシュを発見し、DNA型鑑定を行ったところ、女児の下着に付いていたものと一致。菅家被告も犯行を自白したため、九一年十二月、逮捕した。菅家被告は当初、起訴事実を認めたが、一審の結審後に無罪主張に転じた。
宇都宮地裁は「専門的な知識・技術を持った者が適切な方法で行ったのであれば、DNA型鑑定の証拠能力は認められる」と述べたうえで、自白の信用性も認めて無期懲役を言い渡した。二審・東京高裁も「DNA型鑑定には、科学理論的な根拠がある」とし、菅家被告の控訴を棄却した。
これに対し、弁護側は、DNA型が一致しても同一人物だとは断定できないなどと主張、「菅家被告を犯人とした判断は誤り」として上告していた。
DNA型鑑定は、我が国では警察庁が開発し、一九九二年以降、各都道府県警察で実施されるようになった。同庁によると、今年三月末までに全国で計約二千三百件の鑑定が実施され、約二百件の刑事裁判で証拠採用されている。その多くは殺人・死体遺棄事件と性犯罪事件だという。
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◆DNA型鑑定、科学捜査の大きな手段に◆
【解説】今回の最高裁の決定は、DNA型鑑定が日常的に実施されている捜査現場にとって、強力な“後押し”となることは間違いない。
現在、実施されているDNA型鑑定は、人の細胞内に存在するDNA(デオキシリボ核酸)の特定部分の配列を比較することにより、同一人物であるかどうかの確率を求める手法で、指紋のように個人を完全に識別できるわけではない。今回の事件の一審判決では、同一のDNA型と血液型を持った人物が現れる確率は1000分の1・2程度と認定している。
最高裁は決定で「鑑定の証拠価値については、その後の科学技術の発展で新たに解明された事項なども加味して、慎重に検討されるべき」と述べ、DNA型鑑定の技術的進歩をその都度、検証しながら証拠としての価値判断を行うべきだと指摘した。
自白に頼らない科学的捜査に重きが置かれる中で、DNA型鑑定は捜査当局にとって大きな武器だ。その証拠価値をより高めるためにも、鑑定精度の向上がさらに求められている。(植木 康夫)(7月18日21:15)
http://www.yomiuri.co.jp/00/20000718i112.htm >弁護側は、DNA型が一致しても同一人物だとは断定できないなどと主張
司法試験見直したほうがいいんじゃない