今アメリカで、マルクスがブームになっている。『21世紀の資本論』と題する700ページ近い専門書がアマゾン・ドットコムのベストセラー第1位になり、
フランス人の著者トマ・ピケティがワシントンにやって来ると、ロック・スター並みの聴衆が集まった。
保守派は「マルクスの本がベストセラーになるのは、アメリカの歴史はじまって以来の危機だ」と警戒し、
リベラル派の経済学者、ポール・クルーグマンは「ピケティは不平等の統一場理論を発見した」と絶賛した。
それはこの本がマルクスと同じく、世界で所得分配の不平等が拡大している事実を明らかにし、その原因が資本主義にあると主張しているからだ。
次の図のように、不平等度(資本収益の所得に対する比率)は、ヨーロッパでは20世紀の初めには今のアメリカと同じぐらい高かった。
http://www.newsweekjapan.jp/column/2014/05/07/newgraphic.jpg ピケティはこの原因を資本蓄積の増加に求め、次のような資本主義の根本的矛盾を示す:gを成長率、rを資本/所得比率とすると、
r>gとなると資本収益のシェアが高まる。それを投資することで資本蓄積が増えて資本分配率が上がり、さらに不平等化が進む。
世界の歴史を通じてrはおおむねgより大きいが、税引き後でみると両大戦の時期だけr<gになっている。
ヨーロッパではアメリカほど資本蓄積が進まなかったので、分配は平等で戦後の成長率は高かった。資本収益率が成長率より低いと、分配は平等化して成長率は高まる。
戦争に負けて資本が破壊された日本とドイツの成長率が高かったのも、資本ストックが英米の水準に追いつく過程と考えれば不思議な現象ではない。
日本の場合は、一人あたりGDPがイギリスに追いついた段階で成長が止まり、90年代にバブルが崩壊した。
このような資本過剰は、人口が減少して成長率の下がる国でもっとも顕著にあらわれる。その例が日本である。
第二次大戦後、欧米の水準にキャッチアップする過程ではg>rだったが、80年代に逆転した。90年代にはバブル崩壊で成長が止まり、r>gになって企業の貯蓄超過が起こり、賃金が下がった。
では、この格差を是正するにはどうすればいいのか。フランス社会党員であるピケティは「グローバルな資本課税」を提言する
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2014/05/21-2.php