「共産党は許せない。だが、毛主席は別だ」
中国西北部の新疆ウイグル自治区カシュガル地区で住民と警官計16人が死亡した衝突事件から2日後の17日。
区都ウルムチでは、銃を手にした警官が各所で目を光らせていた。
喫茶店の向かいの席に座った少数民族ウイグル族の男性(46)は、革ジャンの内ポケットから小さな丸いバッジをそっと取り出した。
「人民に奉仕せよ」の標語をあしらった、赤地に金色の毛沢東の肖像を描いた「毛沢東バッジ」だ。
男性は、自治区内で毛沢東思想を学習するウイグル族グループの有力メンバー。
だが、口をついて出てくるのは、同胞を抑圧する共産党政権への不満だ。
「我々は党から差別され、敵視されている。中国からの独立を主張するのは当然だ」
10月末、ウイグル族の男女3人が北京・天安門前に車で突入、炎上した事件は、党の少数民族政策に不満を抱き、党の象徴である巨大な毛の肖像画を標的にしたとみられている。
毛はウイグル族居住区を中国に併合した指導者でもある。
だが、男性の胸中には、党への敵意と、毛沢東への崇拝の念が同居していた。
男性は小学校から大学まで無料で進学し、毛が進めた少数民族優遇政策の享受者の一人。
毛の過去の「罪」に触れた歴史教育を受けていないことも一因だ。
しかし、2009年7月、ウルムチで起きたウイグル族大暴動で、同胞が次々と警官に射殺される光景を目の当たりにした。
ウイグル族への就職差別も進むなか、党への信頼はみるみるうちに、薄らいでいった。
そんな時、知人の薦めで手にした毛の著作で、毛がかつて「大漢民族主義を採ってはならない」と語っていたことを知り、救われた。
誰もが平等だったという毛時代の再現を目指し、漢族とも連携して「新共産党」を作ろうとしている。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131225-OYT1T00310.htm