【北京=島田学】中国空軍は主力戦闘機「蘇30」「殲11」や早期警戒機が28日に中国の防空識別圏
(ADIZ)内を巡視飛行したと発表した。中国の国営新華社が空軍報道官の談話として伝えた。
「防空識別圏内での巡視飛行を常態化させていく」とも強調した。ただ、飛行した空域が日本、韓国、
台湾の防空識別圏と重なる部分かどうかは明らかにしていない。
空軍は談話で「高度な警戒態勢を維持している。脅威の程度に応じて相応の措置を取り、防空上の
安全を断固防衛する」と主張。米軍機や自衛隊機が、事前通告せずに相次いで中国の防空識別圏内を
飛行したことをけん制した。
空軍は、防空識別圏の設定を発表した23日にも中国軍機を同空域で飛行させたが、このときは
戦闘機ではなく大型偵察機2機だった。戦闘機の派遣は偵察機に比べ、偶発的な衝突の可能性を
高めかねない。
日米両政府は、中国が防空識別圏について、まるで領空など自国の管轄権が及ぶ空域と同じように
とらえていることを問題視している。
北京外交筋は、中国空軍が28日の戦闘機の飛行についてパトロールを目的とした「巡視飛行」と
表現したところに「自国の管轄権の範囲内だとの意識がうかがえる」と指摘。中国は領空拡大の
既成事実化を狙っているのではないかとも批判した。もっとも、中国国防省の楊宇軍報道官は
「防空識別圏は領空ではない」と述べている。
一方、中国軍の熊光楷・元副総参謀長は28日、北京で開いた日中有識者によるシンポジウムに
出席した。出席者によると、中国の防空識別圏の設定が「歴史的経緯をみれば、これが日中間の
軍事衝突に発展することはあり得ない」と語り、運用面で慎重に対応する考えを示唆した。
シンポジウムには民主党の玄葉光一郎前外相や山崎拓元自民党副総裁らが出席し、中国の
防空識別圏に沖縄県の尖閣諸島上空が含まれていることなどに抗議した。中国側は、日本側との
偶発的な衝突回避のための危機管理メカニズムを確立することに前向きな姿勢を示した。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2900W_Z21C13A1EB1000/?dg=1