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13 16文キック(家)
朝日 「首相の権力、原発ゼロへ向かうものなら歓迎しよう」



天声人語 2013年 11月 14 日(木)付

 あれからまだ1年しかたっていない。ずいぶん時間が過ぎたような気がする。
去年の11月14日、当時の野田首相は自民党の安倍総裁との党首討論で宣言
したのだった。翌々日に衆院を解散します、と▼発言する野田氏の表情を現場で
見ていた。視線がなぜかしきりと上の方を向く。壁の時計に目をやっていた。討論
は短い。持ち時間の間になんとしても解散宣言まで持っていかなくてはならない。
ぶっつけ本番の攻防なのだと得心した▼総選挙になれば民主党の負けは必至。
「自分の会社をわざと潰す社長がどこにいる」。党内は憤激していた。それでも
消費税は上げなければならぬ。野田氏は伝家の宝刀を抜いた。首相が大権を
ふるう。政治の最も生々しい瞬間である▼野田氏の念頭に小泉元首相の郵政
解散があったかどうか。惨敗と圧勝とで結果は正反対だが、どちらも党内を敵に
回しての立ち回りだった。その小泉氏が安倍首相に向かって「権力を使え」と説く。
おとといの日本記者クラブでの会見である▼いわく首相の権力は絶大だ。首相が
決めれば反対派は黙る。その力を使って下さいと国民も期待している。こんなに
運のいい首相はいない。さあ原発ゼロを決断せよ、と。権力という剥(む)き出しの
言葉がこれほど連呼される会見も珍しい▼国民に由来する力とはいえ権力には
魔性が潜む。その際どさを自覚しつつ善用するなら歓迎しよう。野田氏には消費税
への信念があった。今の安倍氏に原発ゼロへの思いはうかがえないが。
http://www.asahi.com/paper/column.html?ref=com_gnavi