この水曜日の夜は、今後、香川真司のサッカー人生を語る上で、もしかしたらターニングポイントになるかもしれない。
頑固オヤジの考えを変えさせた可能性があるからだ。マンチェスター・ユナイテッドのデービット・モイズ監督のことである。
後半は香川へ左MFから「中へ入っていけ」と指示し、さらに終盤の10分間は、初めて彼自身が最も得意とするトップ下のMFとして、プレーさせた事実が、それを物語っている。
試合後、指揮官は記者会見で香川をベタ褒めした。
「今日のシンジは、私がここに来て以来、ベストのパフォーマンスを見せた。まだ本領発揮とはいかないが、今日のシンジは今までの試合で見せていなかったものを見せた。本当に喜ばしい」
「ボールのないところの動きがすばらしかった。シンジついては、誰もがその能力を私に語ってくれるが、今日初めて私は本当のシンジを見た」
「ナンバー10のポジション(トップ下のMF)でプレーさせたが、ウェイン(ルーニー)との関係がよかった。彼のプレーの姿勢とエネルギーはすばらしかった。大いに喜ばしい」
これまで香川はいい選手で、ベストポジションはトップ下のMFと聞かされていたが、信じていなかった。だから日本代表でのポジションでもある、左MFとして起用したが、今日初めて香川のよさが分かった、と認めたのだ。
さらに喜ばしい光景があった。ミックスゾーンと呼ばれる取材エリアで、報道陣に囲まれる香川に対して、ルーニーらチームメートが次々を体当たりしたり、耳を摘んだりして通って行ったのだ。
15年以上、マンチェスターUを取材しているが、こんな光景はほとんど見たことがない。香川はチームメートからも、この夜のプレーぶりを祝福されたのだ。
いまマンチェスターUが欠いている創造性をシンジは作り出してくれる。という共通認識を期待感が、チームに浸透した、ということだろう。次の試合では、もっとパスが回ってくるだろうし、香川を生かす動きやプレーも見られるはずだ。
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