http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20131002/CK2013100102000273.html ◆25年前発見 町制50周年記念し申請
宇宙に小さな函南(かんなみ)町が誕生−。月光天文台(函南町桑原)の元職員が一九八八年に見つけた小惑星が、「函南(kannami)」と命名された。ことし四月に町制五十周年を迎えたの
を記念し、月光天文台が国際天文学連合(IAU)に町名を申請して承認を受けた。
今回名付けられた「函南」は、地球の外側を回る火星と木星の間に六十二万個ある小惑星群の一つ。楕円(だえん)形の軌道で太陽から二億五千万〜四億一千万キロ離れており、三・三四
年かけて一周する。発見当時の明るさは十七等星。肉眼では見られず、望遠鏡で写真撮影してやっと分かるほどだ。現在は太陽の方向に位置し、観測できない。
大きさは、明るさや小惑星の並びなどから、直径五〜七キロと推定される。正確な大きさや形状、構成する物質などは分かっておらず、赤外線望遠鏡がない月光天文台では詳しい研究に限
界がある。
同天文台は八七〜八八年に五十センチ望遠鏡で百七十五個の小惑星を発見。地球に接近する軌道を持つ「アポロ型小惑星」を、八八年十二月に日本で初めて発見した大島良明さん(60)
=静岡市清水区=が、直後の追跡調査で「函南」となる小惑星を見つけた。天文台はこれまで十二個の小惑星に「伊豆」や「駿河」といった名前を付けたが、函南は長い間「小惑星13934」と
番号だけ付けられていた。函南町制五十周年をを記念し、町民に天体への関心を高めてもらう狙いで、天文台は七月五日に町名を申請。IAUは八月二十一日付の小惑星回報で函南と命名
したことを発表した。
発見者の大島さんは「毎日忙しく観測した当時のことを思い出した。住んでいてお世話になった町なので、小惑星に町名がついて本当にうれしい」と話した。見つけたものの名前が付いていな
い小惑星が多くあり、「今後もどんどん命名してください」と天文台に伝えた。
月光天文台は函南の特徴を図で説明したパネルを作り、町内すべての七小中学校に配る予定。渡辺裕彦台長(61)は「『函南』はまだまだ謎が多い。小惑星への関心が高まっているので、大
きな研究機関でも『函南』が研究対象になってくれれば」と話している。
(山田晃史)