【コラム】「悲憤慷慨型」の反日を超えて
(前略)多くの日本人はこれに対し憤りを抱くと同時に無力感・虚脱感に襲われている。「中国は
尖閣諸島を武力で占領し、沖縄までも中国領土だと主張するだろう」とあおる動きも広がっている。
事実、中国の一部メディアは「沖縄=中国領土」論をかき立てている。日本と中国の極端なメディア
報道だけを見れば、両国は戦争発生の一歩手前も同然だ。
2007年に病気を理由に首相職を投げ出し、「政治家失格」と見なされた安倍晋三首相が昨年
再び首相に就任した背景にも、尖閣諸島問題が触発した中国脅威論がある。「強いナショナリズム
を主張する安倍首相なら危機に陥った日本を救えるかもしれない」という漠然とした期待感が
あったのだ。しかし、安倍首相も中国の領海侵犯には手の施しようがないようだ。(中略)
「中国崩壊論」「中国侵略論」という誇大妄想や被害妄想に陥り、戦争も辞さないと叫ぶ極右派も、
当の中国に対しては低姿勢だ。だから、人々がデモを行うのは中華街ではなく、コリアン・タウン
なのだ。怒りの対象は中国による尖閣諸島付近の領海侵犯ではなく、韓国の元慰安婦を象徴する
少女像だ。このような反韓ムード拡大の背景には、韓国が日本の国力低下を理由に「民主主義国」
の日本ではなく、「共産主義国」の中国の肩を一方的に持っているという被害意識もある。
韓国が一部の日本人政治家のゆがんだ歴史認識を批判するのは当然のことだ。しかし、「悲憤慷慨
(憤慨し、嘆き悲しむ)型」の糾弾だけでは韓国の国益は守れない。将来が不安で、力の衰えた老人
のような境遇に陥っている日本と、あふれる力を持て余している若者のような中国の反目と対立は、
19世紀末の北東アジア情勢と重なって見える。韓国は日本と民主主義・市場経済の価値を共有し、
中国とはアジアの歴史認識を共有している。こうした点で、韓国は北東アジアの新たな秩序構築を
主導できる可能性がある。「歴史を忘れた民族に未来はない」という言葉が当てはまるのは日本だけ
ではない。周辺強大国の勢力再編の渦中で国を奪われた経験のある韓国人こそ最も切実に肝に銘じる
べきだ。
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