特効薬の「ソフトバンク」も効果なし、日本の電機の重い病 編集委員 西條都夫
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1202Y_S2A111C1000000/?dg=1 11月7日付の日経新聞によると、世界中の金融機関がソフトバンク詣でを始めているという。日本のメガバンクはもちろん、
ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースも次々に門をたたき、孫正義社長のもとに押しかける。理由は言うまでもない、
先行き不透明なこの時代に総額1兆5000億円を超える米スプリント・ネクステルの大型買収に踏み込む孫社長の実行力に
世界のバンカーが驚き、興奮しているのだ。
ラブコールをおくるのは金融機関に限らない。ソフトバンクとスプリントの携帯電話の契約者を合計すると9600万人に達し、
1億人の大台が目の前だ。日本最大のNTTドコモ(6100万人)や2位のau(3600万人)が、急に小さく見え始めたのは錯覚
ではない。世界中の携帯端末メーカーや通信設備メーカーが汐留のソフトバンク本社を訪れ、やはり孫社長との面会を
希望する。日米をまたにかけるメガキャリアとの取引を拡大しようと、虎視たんたんと狙っているのだ。
■首をひねるソフトバンク幹部
ところが、そんな興奮とは無縁の一群の企業がある。孫社長の側近でもあるソフトバンク幹部は「これだけいろいろな売り込み
が殺到するなかで、日本の電機メーカーからは1社も反応がない。いったいどうなっているのか」と首をひねる。
残念ながら、この反応の薄さは、日本の電機産業の低迷を反映したものだ。ソフトバンクにくっついて米国に出て行けば、
少なくとも自社単独よりも、小さいリスクで米市場を開拓できるはず。今回の買収が仮に数年前に起こっていれば、シャープ
あたりはこうした「コバンザメ戦略」を採用したかもしれないが、今はコバンザメになるほどの余裕もないということか。