桃山時代の1591年に、ベトナムの安南(あんなん)国が「日本国国王」に宛てた親書が発見された。
記録に残る徳川家康宛ての親書を10年さかのぼる最古の安南国書で、日本との通交を求めていたことを物語る貴重な史料だ。
九州国立博物館(福岡県太宰府市)が昨年、京都の古書店から購入したが、それまで存在は知られていなかった。16日に開幕する「大ベトナム展」で公開する。
文書は縦33・3センチ、横34・9センチ。全文漢文で墨書され、朱印と花押のような黒印がある。
光興14年というベトナムの年号が記され、差出人の「安南国副都堂福義侯阮」は、ベトナム中部を支配していた阮(グェン)ホアンという人物の関係者とみられる。
内容は「昨年、陳梁山(ちんりょうざん)という使節に象牙などを託しました。
今年来航した(使節の)隆巌(りゅうげん)は陳という人物を知らないというので、改めて珍しい品々を贈ります」とつづり、日本との「往来交信之義」(通交)を求めている。
当時天下人だった豊臣秀吉が安南国と通信した記録はなく、陳梁山や隆巌という人物も知られていない。
当時は日本人商人が東南アジアで積極的に交易を展開しており、交易を円滑に進めるため将軍などの使節を詐称する事例があった。
同館の藤田励夫(れいお)保存修復室長は「この書簡も、日本国王使節を装って来航した商人に、安南国側が託した可能性もある」と話している。
家康宛ての親書は1601年に届き、江戸幕府の外交史料集に親書原文と家康の返書が記録されている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20130415-OYT1T00620.htm