森田実氏の地方講演では会場から尖閣で「中国と一戦交えよ」という声が噴き出すそうだ。
木語:「一戦交える」弱腰=金子秀敏
政治評論家の森田実氏が講演で地方に行くと、会場から尖閣で「中国と一戦交えよ」という声が
噴き出すそうだ。
一見、「棚上げ」は軟弱で、「一戦交えよ」は強腰に見える。だが、実はまったく逆だ。それが国民も
国会議員も最近、わからなくなってきた。危険なことだ。
島の主権は明らかに自国にあり領土問題はない。そう双方が棒のように突っ張るから、その突っ
張った棒の上に神棚を作り、しめ縄を張って争いを鎮めるのだ。強い外交力がいる。
一方、「一戦交えよ」論は、領土問題があることを認めて、力で決着しようという。負ければ領土を
取られるのは覚悟だから、半分、領土主張を放棄したに等しい。
「一戦交えよ」は、無謀な平和ボケだ。少なくとも安倍首相が憲法を変えて国防軍ができるまで
待ってから言い出すべきだ。
米ワシントン・ポスト紙も尖閣諸島で武力衝突が起きる可能性を考えたのだろう。1月26日の社説で
「問題を棚上げすべきだ」と主張した。その前に、クリントン国務長官も日中双方に向けて対話解決を
呼びかけている。日中双方が危険な状態に入ったと米国からも見えるのだろう。
そもそも、中国に対する棚上げ論は米国が元祖である。1972年2月のニクソン訪中で出された
米中共同声明で、米国は台湾島の領有権問題をこう処理した。
「(米国は、中国が)台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。(米国は)この
立場に異論をとなえない」
中国は、台湾島が中国領土だと主張し、米国は同意しない。棚上げである。
このくだりは、同年9月の日中共同声明では「(日本は、中国の立場を)十分理解し、尊重する」に
なった。日米とも、中国との外交関係の土台には棚上げの構造が組み込まれているのである。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130131ddm003070091000c.html