米防衛企業がリストラを加速させる。オバマ大統領の再選で国防予算が削減される可能性が高まった
ためだ。ボーイングは防衛部門の管理職を30%削減し、米国内の一部工場を閉鎖する。ロッキード・
マーチンも1万人規模の従業員削減を検討する。業界全体では100万人の雇用減少につながるとの
見方も浮上する。
ボーイングのミュイレンバーグ防衛部門社長が従業員に宛てたメッセージの中でリストラ計画を明らか
にした。管理職は今年末までに2010年と比べ30%削減する。同社は具体的な人数は明らかにしていない。
カリフォルニア州のオフィスを閉鎖する。複数部門を統合して管理業務を効率化する。
ボーイングは国防予算の縮小に備え、1月に爆撃機や空中給油機などを造るウィチタ工場(カンザス州)の
閉鎖を決めている。これまでは防衛部門の生産能力を1割以上削減する計画だったが「長期的にはさらに
必要」(同社)としている。一連のリストラで最大で40億ドル(約3200億円)のコスト削減を目指す。
米報道によると、ロッキードは国防予算が追加削減された場合、1万人をレイオフ(一時帰休)する可能性
があることを従業員に伝えた。すでに3年前と比べ従業員の18%にあたる2万6千人を減らしているが、
一段のリストラに踏み込むことを検討する。
国防予算の削減は、昨年成立した財政管理法に基づく処置で、与野党が今後10年間で最低1兆5千億
ドルの赤字削減で合意できなければ強制的に国防予算を減らすという内容。国防予算の削減幅は今後
10年で5千億ドルに達する見通し。米軍兵士の人件費は減らさず、装備調達の削減や先送りが柱となる
案が有力で、防衛企業への影響が大きい。
これに対し全米製造業者協会(NAM)は強制削減が発動されれば、部品や補修など関連産業も含め
最大で100万人規模の雇用が失われると試算する。NAMは米国内総生産(GDP)を約1%引き下げる
影響があるとする。先端素材やIT(情報技術)、高度な数値解析などハイテクの粋を集める防衛技術は、
米産業のイノベーションをけん引する黒子役としても機能してきた。防衛企業のリストラが進めば広範な
産業の競争力に影響が及ぶ可能性がある。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0804N_Y2A101C1FF2000/