大五郎に手を出したら人生終わりなのか

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104 ぬこ(茸)
どうして御上は最強最悪のドラッグである酒を容認しているのだろう。
アルコール、阿片、コカイン、煙草、コーヒー、緑茶などなど、有史以前から今日にいたるまで
人間は精神状態を変える薬物と深い関わりをもってきた。人はストレス・リダクション・ツールたる
ドラッグなしでは、まともな社会生活は営めないし、これほどの文明を築き上げることもできな
かったはずだ。もし全てのドラッグを取り上げられてしまったら、大半の人は生きていく意欲を
失ってしまうに違いない。そこで御上は考えた。どのドラッグを庶民に与えるのが得策だろうか。
覚醒剤やヘロインといったハード・ドラッグは、耐性が形成されるのが早く、人によっては使用を
始めてわずか数ヶ月で中毒者になってしまう。そうなると貴重な労働力が失われるのでよろしくない。
では依存性も耐性も極めて低く、身体に障害を与えることもないマリファナはどうか。
何の副作用もなく、ただただ人を幸せにするマリファナを解禁してしまうと労働意欲を阻害する
恐れがある。となると、残りは酒と煙草だ。ドラッグとしてのパワーは両方とも申し分ない一級の
向精神薬物である。過剰に摂取すると、二日酔い、吐き気など、どちらもすぐ不快症状を呈するので
それほどのめり込む心配もない。マリファナと違って、アメとムチを備えた、コントロールしやすい
ドラッグである。またそれにもまして御上が着目した点は、酒が心身に重大な損傷を与えるには
20年、30年という長い年月を要するということだ。これなら、労働力の落ち込みを気にかける必要は
ないし、無事お勤めを終え、50代、60代になって死んでくれれば、福祉予算の捻出に腐心しなくてすむ。