世界で一番幸せなはずのブータンでも若者は「韓国に生まれたかった」

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1 スコティッシュフォールド(埼玉県)

 太い木の柱、白く塗られた土壁、色鮮やかな装飾が施された窓枠。伝統的な3階建て家屋に3世代11人が暮らす。
首都ティンプー郊外の、典型的なブータンの大家族だ。

「私は世界で一番幸せじゃないかと思うぐらい幸せです」
 そう話すのは祖母のルンキさん(65)だ。ルンキさんの長女の家族と、次女の家族が同居している。
遠くにいる長男の17歳の息子も、ティンプーの高校に通うために一緒に住む。
 ルンキさんに「今の幸せを10段階で評価すると?」と尋ねた。即座に、「もちろん10点満点」と答えが返ってきた。
「何が起きても家族や親戚が助けてくれるから、いつも安心していられる」という。
3カ月ほど前、孫のノルブ・ワンディちゃん(8)が耳に炎症を起こして入院したときは、家族総出で看病や家事にあたった。
次女のデイチン・ザンモさん(28)は失業中だが、必要なお金は姉夫婦が貸してくれるし、親戚の紹介で近く仕事も見つかりそうだ。

 うれしい「悩み」もある。
「来世で人間に生まれ変わるため、死ぬまでにもっとたくさんお祈りがしたいのに、孫たちの世話でなかなか時間がとれない。
それに、またブータン人に生まれ変われるかどうかも心配ね」

 ルンキさんの長女のカルマ・ヤンゾンさん(35)は中学校の数学教師。同じ家族なのに、幸福度を聞くと、なぜか6点だった。
減点の理由は、中学1年の娘のイェシ・カンド・ワンモさん(12)の将来のことだ。
「私たちの時代は、5人の教師を募集すると何回も再募集してようやく埋まった。
でも今は5人の募集に1千人が殺到します。娘の世代は勉強や就職で激しい競争を強いられる」

 特技を身につけて自信を持ってほしいと、イェシさんには水泳とバスケットボールを習わせている。
そのイェシさんの幸福度は8点。理由を聞くと意外な返事が返ってきた。

「韓国に生まれたかった」
 イェシさんは、大の韓流ファン。
ブータンでもDVDやテレビで韓国の映画やドラマを見ることができ、若者の流行をリードしている。
同級生の間でも韓流スターの話題でもちきりだ――。
:http://www.aera-net.jp/summary/120624_002932.html