このほど中国のハッカーがイギリスの防衛企業のコンピュータに侵入し、最新鋭ステルス戦闘機F35
の機密情報を盗んでいたことが明らかになった。今や電源を切った状態のコンピュータにも侵入すると
いう中国のサイバー攻撃。中国のスパイ行為はどこまで行くのか。アメリカのスパイ、諜報活動研究の
専門家デイヴィッド・ワイズ氏に『「中国の正体」を暴く』の著者、古森義久氏がインタビューする。
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古森:「中国当局はそもそもなぜこれほど大規模で攻撃的なスパイ活動をアメリカに対して続けるの
か。私は中国の軍事動向を調べてみて、これほど野心的に、しかもスピードをあげて自国の軍事力
を増強しようとすれば、軍事超大国のアメリカの先端技術を盗もうとするのは、いわば当然だという
実感を得ました。」
ワイズ:「中国がまず経済的にグローバルな超大国になりつつあることは確実です。だから軍事面で
も超大国になりたいのでしょうが、中国軍の戦力はアメリカにくらべればまだまだ弱い。貧弱な領域
が多い。米軍にとにかく追いつき、追い越せ、という自己要請が異様なほど強いといえます。そのた
めには古森さんの指摘のように、米軍のハイテクを盗むことが最も合理的という理屈になるのでしょ
うね。
昨年1月、ロバート・ゲーツ国防長官(当時)が訪中した際、中国側は突然、レーダー捕捉が難しい
ステルス戦闘機の試験飛行をしました。米軍のステルス機にあまりに酷似した飛行機です。米側の
技術を盗用したとしか思えません。
現実に中国は米軍の中性子爆弾の機密を取得した。トライデント型戦略潜水艦に装備する弾道ミサ
イルの核弾頭W88の技術をも奪った。核弾頭を軽量化し、しかも多弾頭化する機密を得たのです。ス
パイ行為による盗用がいかに合理的だといっても、許されてよいはずはない。」