http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011120390070435.html 横浜市のマンション屋上などで放射性ストロンチウムが検出された問題は、
福島第一原発の事故とは関連が薄く、過去の核実験が原因との見方が強まってきた。
核時代の負の遺産が現在にも影響を及ぼし続けていることになるが、大気圏内での
核実験は三十年以上も昔の話。そんな「過去の亡霊」が、市街地にも姿を見せるというのは
どういうことなのか−。 (榊原智康)
ストロンチウムは骨に沈着して白血病を引き起こす原因になるとされる。文部科学省は
海外での核実験などの影響を把握するため一九五〇年代から、雨水やちりなど放射性
降下物の濃度を全国各地で調べてきた。
大気圏核実験は五〇〜六〇年代に盛んになり、中国が八〇年に行ったのが最後。
ストロンチウムの濃度は大気圏核実験のたびに上昇し、八六年のチェルノブイリ原発事故で
も高い値が観測された。それ以後、大気圏核実験や大きな原発事故はないが、不検出に
までは下がらず、微量ながら今も降り注いでいる。
二〇〇九年の調査では、月間累積量で一平方メートルあたり最高〇・一二を観測。
横浜市のマンションは築年数が浅いが、広瀬勝己・上智大客員教授(環境放射能学)は
「このレベルのストロンチウムが、マンションの屋上に数年間降り積もれば、泥などに
含まれる濃度が一キログラムあたり数になることは十分あり得る」と指摘する。
広瀬客員教授によと、日本に降るストロンチウムは核実験後、数十年間にわたって
大気中を漂い続けたのではなく、地表に降り注いだものが風で再び舞い上げられていると考えられる。
放射性降下物の研究に取り組む気象庁気象研究所によると、元は中国など東アジアの
砂漠地帯の可能性が高い。砂漠には、米ソや中国などの核実験で放出されたストロンチウムが
比較的多く地表にとどまっている。これが「黄砂」に付着し、西風に乗って運ばれる。
同研究所の五十嵐康人研究室長は「ストロンチウムは春先に多く検出されるなど、
黄砂の飛来量と相関性がある」と解説する。
証拠
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/images/2011120399070435.jpg