大震災半年:道内の備えは?/1 公共交通機関 /北海道
http://mainichi.jp/hokkaido/shakai/news/20110911ddlk01040183000c.html ◇津波から逃げ場なく 移設や誘導、事業者任せは限界
津軽海峡沿いを走るJR江差線。手を伸ばせば函館湾に届きそうな車窓の風景が旅情をそそる。
しかし、その海が牙をむいたら……。3月11日、出張で函館に向かっていた神奈川県の会社役員、
奥山高樹さん(49)は、今もあの時の胸のざわつきを忘れていない。
午後2時46分、特急列車は突然、茂辺地駅(北斗市)近くの切り立った斜面で緊急停止した。
「地震が発生したため、しばらく停止します」。車掌のアナウンスが入る。
間もなく乗客は携帯電話などを通じて巨大地震発生を知り、車内はにわかに騒がしくなった。
午後4時過ぎ、約20メートル下に広がる海に目をやると、津波の前兆の引き波が始まっていた。
「何が起きているのか」。不気味な光景に不安が募った。
それから約5時間後。列車は非常食などを積み込むために、ゆっくりと標高約5メートルの茂辺地駅に移動した。
先を急ぐ奥山さんは、数人の乗客と一緒に下車。車掌は「降りるのは自己責任です」と
何度も念を押してきたが、状況説明はほとんどしてくれなかった。
呼んだタクシーでその場を離れて約2時間後、隣接する函館市に高さ2・4メートルの最大波が到達した。
「一番危険な時間帯に、なぜ低い駅に移動したのか」。後にそれを知った奥山さんは、JRの対応に不信感を募らせる。