大きく背伸びし、全身を覆う重い湿気を振り払った。8回2死。ダルビッシュは井口
に3球勝負を挑んだ。151キロ、150キロ、151キロ―。球威は落ちない。すべてス
トレート。打球は力なく中堅に浮いた。8回5安打1失点。118球の力投で、08年に
並ぶ自己最多タイの16勝目を手に入れた。
「08年はコントロールで何とかもっていた。その年と(今とは)はレベルが違う。
あの頃に比べたら実力は天と地の差がある。ただ、投手は勝ち星で評価されるべきでは
ない。何勝しようが、気にしない」。雄弁に自らの哲学を語った。
最速152キロの直球に99キロのカーブ。多彩な変化球に懐かしいアイテムが復活
した。スプリットだ。2年前まで投げていたが「あまりにも簡単に打ち取れる球。面白
くなかったんでやめました。でも、マー君がいっぱい投げているから…」。27日にソフ
トバンクを歴代2位の18奪三振で完封した弟分に触発され、久々に披露。投球に幅を
さらに広げた。9三振を奪い今季206K。4度目のシーズン200奪三振は球団史上
初の快挙だ。ネット裏に詰めかけたインディアンス、エンゼルスなどメジャー13球団
24人のスカウトの度肝を抜いた。
ハイテクドリンクが熱投を支えている。練習中や試合中、よく手に取る飲料は一見、
プロテインに見えるが、実はデンプンを原料にした炭水化物だ。スウェーデン生まれの
「ヴィターゴ」という飲み物。エネルギーを高速で摂取できる特徴がある。「胃に負担
がかからないんです。ダルはサプリメントも足して飲んでいます」(福島チーフトレー
ナー)
この試合までチームは7試合で1勝6敗と大苦戦。「僕が勝つことで違う気もする。
(この日の白星を)連勝の最初の勝ちにしたい。中4日でも中3日でも、何でもどうぞ
という感じ」。エースの奮投が、流れを変えた。
http://hochi.yomiuri.co.jp/baseball/npb/news/20110901-OHT1T00043.htm