学生時代、よく東京から裏磐梯の雪山へ通った。高校の冬休みに、北塩原村のペンションで住み込みの
アルバイトをしながらスキー三昧の日々を送ったこともあった。数年ぶりにそのペンションを訪ねると、福島第1原発事故の風評被害がここにも表れていた。
同村のペンション「ベルク」。例年、夏休み期間中はほとんど満室だったが、今年は2、3割程度。
昨年、県外からの修学旅行は中学校4校だったが、今年はゼロ。原発から70キロ以上離れた同村の放射線量は、
首都圏の「ホットスポット」よりも低いが、「放射線が心配」と言って旅行を控える常連客が多いという。
オーナーの神野秀文さん(42)は「このままでは経営がもたない」と頭を抱える。
同村でアウトドアスポーツクラブ「バックス」を経営する徳田智さん(43)は、客が釣りやカヌーを楽しむ写真や動画を、
同意を得て店のブログに掲載している。風評被害で客は減ったが、「『安全です』と言葉で繰り返すより、
実際に楽しんでいる人の姿を見てもらう方が安心感を与えられる」との考えからだ。
徳田さんは「放射線を心配していたが、最後には『また来ます』と言って喜んで帰っていくお客さんがたくさんいる。
風評被害を解消するためには、地道な努力を積み重ねていくしかない」と話す。
目に見えない放射性物質を巡る風評被害は、個人の価値観や人生観に大きく左右される。
ただ、過剰反応するあまり、日々の生活や行動に制限を加え過ぎるのはどうかと感じる。
次の休みは、友人を誘って裏磐梯へ繰り出そうと思っている。(東京社会部)
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