東日本大震災から5カ月がたち、必要な仮設住宅が完成した岩手県内で、12日にようやく携帯電話が通じた
仮設団地がある。電話は重要なライフラインの一つだが、山間部でも完全に通じるようになるには、まだ時間がかかりそうだ。
「やっとだ。これで安心だな」。同県釜石市箱崎町の仮設住宅で12日、漁師の川崎善一さん(66)は携帯電話を手に笑顔を見せた。
市街地から車で30分。漁港を見下ろす高台に仮設住宅約40戸が並ぶ。
だが、NTTドコモの携帯電話はこれまで「圏外」だった。
母(88)が8日、散歩中に熱中症で倒れた。川崎さんの妹(63)が見つけてKDDI(au)の携帯電話で救急車を呼んだが、
海に近い自宅跡で片付けをしていた川崎さんのドコモの携帯には通じなかった。「緊急時に不通だと本当に困る」
ドコモによると、東北と関東では震災により約6700の基地局が壊れたり、電源を失ったりして機能しなくなった。
人口の多い地域や大規模な避難所から復旧作業を始め、過疎地は後回しになった。
特に山間部に仮設を建てざるを得なかった岩手県では、震災前に人が住んでいなかった地域で電波が届かないことがある。
箱崎町は5月に圏外と判明し、工事終了まで3カ月かかった。
携帯各社は被災地で不通地域の解消に努めるとしているが、詳しい状況は公表していない。
最大手のドコモの被災地での基地局工事は9月まで続く。auは6月で震災前の状態に回復。
ソフトバンクは4月に本格復旧したが、電気が通らない地域などの工事は終わっていないという。
応急措置として、ドコモは仮設に暮らす住民に、弱い電波でも受信できる補助アンテナを無料で貸し出している。
電話とアンテナをコードでつなぎ、アンテナを適切な方向に向ける必要がある。
だが、つないでも圏外になることがあり、電波が確実に受信できる場所まで1キロほど移動して電話する人が多かった。
主要道路でも山間部はつながりにくい所が多い。漁協に勤める川崎さんの息子(38)は市街地に近い仮設住宅に入った。
「電話が通じないと仕事にならない」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/0813/TKY201108130192.html http://www.asahi.com/national/update/0813/images/TKY201108130195.jpg