京都・読書之森:琵琶湖疏水と京都の産業・企業 /京都
(著書刊行・京都商工会議所、観光産業特別委員会、1300円)
副題は「京都ベンチャーを生んだその流れ」。120年前の明治23(1890)年に完成した琵琶湖疏水(そすい)。
我々の暮らしを豊かにしたほか、多くの優秀な京都企業の発展にも多大な影響を与えた、知られざる一面を紹介する。
本書の刊行は、疏水を観光資源にと、京都商工会議所が06年度から続ける事業の一つ。
同会議所では、疏水をテーマにした観光マップ作成やフォーラム開催にも取り組む中で、
今では世界的に成長した大企業やユニークなベンチャーと疏水とが、切っても切れない深い関係があることに着目し、各社史など多数の文献を参考に仕上げている。
4章からなる。1章では、疏水を利用した企業の今日について。
実は東京遷都による衰退の打開策としての疏水着工だったが、その精神は各企業の支えにもなり、現代に引き継がれている背景をそれぞれ解説。
2章では着工にいたった実際の経緯や完成直後の京都の様子など。3章では大正−平成期と、疏水と共に歩んだ各企業や市民とのつながりを詳しく説明。
4章では、さらに未来の姿についても触れている。
京都ファンのみならず、京都企業へ就職を考えている学生にもお勧めの1冊だ。【入江直樹】
毎日新聞 2011年7月17日 地方版
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20110717ddlk26070275000c.html