〈山梨:松本哲也 夢は正夢〉練習に自信持って
9日に第93回全国高校野球選手権山梨大会が開幕する。松本哲也選手も山梨学院大付時
代、仲間とともに熱い夏を過ごした。1年生の時には甲子園にも出場した。でも、最も思い出深
いのは、夢舞台への切符を逃した3年生の夏だという。
2002年。圧倒的な強さで春の大会を制し、夏は優勝候補の筆頭に挙げられた。だが、準決
勝で市川に1―4で敗れてしまう。9年前のことを、松本選手は今も鮮明に覚えている。「市川
はスモールベースボールのチームで犠打を絡めて小刻みに得点してきた。味方の失策も重な
った。打ち勝ってきたはずのチームが、その試合では打てなくて。僕も無安打だった」
試合後は泣きじゃくった。負けた日に寮を出なくてはならない。放心状態のまま荷物をまとめて
実家に戻り、数日間、ぼんやりと過ごした。山梨大会決勝も見に行かなかった。「甲子園に行く
ことしか頭になかったから、現実を受け入れられなかった」
思い起こせば、敗戦の伏線は準々決勝にあった。事実上の決勝といわれた甲府工戦で7回コ
ールド勝ち。「みんな甲子園に行けるって思ってしまった。それがいけなかった」
一発勝負の怖さ。そこが年間144試合を戦うプロ野球との大きな違いだ。「プロは次があるか
ら、取り返せるけど、高校野球は負けたら終わり」。両方を知るからこそ、山梨大会に臨む球児
たちに伝えたいメッセージがある。
「僕は悔いが残る終わり方をしてしまった。勝ち負けはつくけど、納得のいく試合をしてもらいた
い。そのためには自信を持ってほしい。これだけやったんだから大丈夫、と。練習はうそをつか
ないから」。松本選手はこう話してくれた日、2軍の練習で最後まで居残ってバットを振り続けて
いた。(プロ野球巨人外野手 構成・金島淑華)
http://www2.asahi.com/koshien/93/localnews/TKY201107040090.html