がん乗り越え「私が踊る」 75歳舞踊家・長嶺さん
フラメンコをベースにした舞踊家、長嶺ヤス子さん(75)が直腸がんを乗り越え、30、31日に新宿区の老舗フラメンコレストラン
「エルフラメンコ」(新宿区新宿3、伊勢丹会館内)の舞台に立つ。東日本大震災後、スペイン人ダンサーが帰国してショーが行えなくなった
ゆかりの店の苦境を知り、「私の踊りでいろんな不安も、自粛ムードも吹き飛ばしたい」と決意した。(竹井陽平)
24歳でスペインに渡り、厳しい修業の末、マドリードのトップダンサーに上り詰めた。帰国後は長唄、三味線などを取り入れた独自の踊りを追求し、
歌舞伎座や国立劇場、カーネギーホールなどで踊ってきた。
今年3月下旬、下血があり、直腸がんと判明。直腸の約3分の2を摘出する手術を受けた。「生き死により、踊れなくなるかどうかが気になった」
4月下旬に退院し、予後も順調だったが、病み上がりで舞台に立つことを決意したのは、ゆかりの深いエルフラメンコの苦境を聞いたからだ。
1967年に開店した際、長嶺さんは内装などをアドバイスし、店で踊ったこともある。同店は40年以上、スペイン人若手ダンサーらが
ほぼ半年間滞在し、毎晩のように本場のフラメンコを披露してきた。後に大スターになったダンサーも多く、スペインでも登竜門として知られる。
しかし、東日本大震災後の3月中旬、原発事故への不安などからダンサーやギター奏者ら7人のスペイン人が帰国し、
4月に来日予定だった交代メンバーも来ていない。ようやく6月中旬に7人が来ることが決まったが、
それまで、フラメンコショーが行えない状況が続いている。
長嶺さんは「のんびり休んでいる場合ではない」と、毎朝夕のウオーキングなどで体力回復に努め、稽古に打ち込んでいる。
踊る演目は「鷺(さぎ)娘」。鷺の娘が人間の男性に恋をするが、最後には地獄の業火に焼かれるという内容。三味線や太鼓の演奏に合わせて、
前半は静かな舞で切ない思いを、後半は激しいステップで恋の苦悩を表現する。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20110524-OYT8T00075.htm