意見共有で「集団の知恵」が低下:研究結果
2011年5月18日 Brandon Keim
「集合知」(Wisdom of the crowd)とは、多数の個人の推測から、驚くほど正確な平均回答が導き
出される統計的現象を指す。個人的バイアスが互いを相殺する結果だ。
集合知は、数量で表わせるような問題の推測において最もよく発揮されるため、集団の知恵という
より、「集団の精度」と表現するのが適切かもしれない。この現象は何十年も前から文献に記されて
きた。古くは1907年、イギリスの人類学者フランシス・ゴルトンが、見本市の来場者たちは雄牛の
体重を言い当てられるという話を取り上げている。そして、経済学者James Surowiecki氏による
2004年のベストセラー『The Wisdom of Crowds』[邦訳は「みんなの意見」は案外正しい』(角川
書店刊)]によって、集合知という現象は広く知られるようになった。
スイスのチューリッヒ工科大学の数学者Jan Lorenz氏と、同社会学者のHeiko Rahut氏はこのほど、
集合知に関する最新研究を行ない、被験者に、他の被験者が考えている推測を教えたところ、集合知
が低下するという結果になったと発表した。
『Proceedings of the National Academy of Sciences』に5月16日付けで掲載された論文によると、
「集団は最初のうちは『賢い』が、他者の推測を知らされると、意見の多様性が狭まり、それに
よって(集合知が)低下する」という。「穏やかな社会的影響であっても、集合知効果に悪影響が及ぶ」
Surowiecki氏が述べているように、集合知が発揮されるためには、一定の条件がそろわなければなら
ない。つまり、集団の各構成員は多様な意見をもち、また、それらの意見にはめいめい自力で到達
する必要があるという。
この条件が欠けると、集団の知性が損なわれることは、幾度かの金融バブルが証明している。群衆
行動のコンピューター・モデリングでも、情報の流れと多様な意見とのバランスが崩れることで、
集団の知性が低下する可能性が示唆されている。
>>2以降につづく