音楽の膨大な蓄積と引き出しの多さから「音楽王」とも尊称される細野晴臣が、
4年ぶりのソロアルバム「HoSoNoVa(ホソノ場)」を出した。全12曲を自身で歌う。
ボーカルアルバムとしては実に38年ぶりになる。
1970年に大瀧詠一らとはっぴいえんどを結成した日本のロックのパイオニアだ。
80年代にはテクノポップのイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)で広く世界で知られるようになった。
今、自ら歌うのは……。「はずみで歌っちゃったんだな、これが。でも年をとると下手な落語家も、いい声になるでしょう」
「音楽のことは全部知っているつもりだったんだけど、汲(く)めども尽きないね。音楽とは、時代の粋を集めたもの。
その時代特有のセンスや趣味、経済までが反映されている。でも古くて、いい音楽が、絶滅種のようになっているんです。
ネットに膨大な音楽の蓄積があるというけれど、余程でないとファンは自分から調べることはない。僕らが知らせるべきだ、と」
懐古趣味ではないとも強調する。「古いのを演奏すると、新しい。逆に僕なんか、これが新しい音楽だと提示されても
馬鹿馬鹿しくなっちゃう。みんな昔にやってきたことなんだから」
「レイジーボーン」や「デザート・ブルース」などの力の抜けた演奏が、無二の魅力に輝いている。
「今の音楽がなくしているものがある。それが音の強弱。テクノのせい、つまりは僕のせいでもあるんだろうけれど、フラットなんですよ」
「録音手法をたとえるなら、20ワットの電気で暮らすみたいなこと。必要なところだけを照らす。暗くて見えないところがあっていい。
でも、闇にも物が存在するし気配がある。音楽や情報だって同じでしょう」
若いミュージシャンからの尊敬が厚く、近年、トリビュートアルバムや過去音源のまとまった再発などが続いた。
「ここで消えた方が美しいぞと言われてるのかも、なんて思っちゃった」と笑った。
http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201104250270.html