九州経済調査協会は8日、東日本大震災が九州・沖縄の経済に与える影響の試算を発表した。
2011年度の8県の域内総生産は2400 億〜6100億円減り、当初1.5%を見込んでいた経済成長率も0.5〜1.2ポイント下押しされる。
関東での電力供給の制約や震災後の消費意欲の低迷が、直接被害が無い九州にも打撃を及ぼすことになりそうだ。
九経調は「消費者心理の回復時期は予測がつかず、09年度以来のマイナス成長になる可能性もある」と指摘している。
九州・沖縄の域内総生産は年約50兆円で、日本全体の約1割にあたる。
今回の試算は九州・沖縄経済への影響を
(1)被災地域の生産設備が壊れたことによる九州の取引企業などの生産減
(2)東京電力管内の供給電力不足に端を発する九州での生産減
(3)全国的な消費意欲の低迷
(4)被災地域の復興需要
(5)生産や調達の代替、の5つに分類。
このうち(5)は「企業がどのような決断をするか不透明」として、(1)〜(4)の影響額をまとめた。
影響額が大きいのは東電の電力不足と消費意欲の低迷で、それぞれ1000億〜3900億円と1800億〜3000億円のマイナスを見込む。
前者では電力不足で関東にある工場の生産が減れば、部品供給などの関係がある九州の工場も操業を止めるといった影響が懸念される。
消費意欲についても、九州・沖縄では足元で宿泊施設や海外クルーズ船来航のキャンセルが相次ぐ。
3月22日時点の調査では、132の宿泊施設と9の観光施設で計12万人のキャンセルが出ている。
九州・沖縄の観光客は東北、関東と海外からが4割を占めており「3〜5月だけで最大約400万人の宿泊が減る可能性がある」(九経調)。
被災地の生産設備損壊による減産などによって、取引関係がある九州の工場が受ける影響は200億〜400億円のマイナス。
一方、復興需要は600億〜1200億円の押し上げ効果があるとみている。
経調は今回の試算とともに8日、東日本大震災の復興支援に対する緊急提言をまとめた。
オフィスや工場移転の受け皿づくりや未利用農地の活用による食料増産といった経済活動の支援に加え、「九州安全宣言」をアジアに発信し、観光客を呼び戻すといった消費回復策を盛り込んだ。
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819891E2EAE2E3968DE2EAE2E6E0E2E3E39E8AE2E2E2E3