佐藤優の眼光紙背:第88回
11日の東日本大震災に対処するために暫定的に国家翼賛体制を確立する必要がある。
菅直人首相の呼びかけに答え、自民党、民主党などの野党も全面協力を約束した。
日本の社会と国家を守るために当然のことである。
権力闘争よりも国民と国家のことを第一義的に考えるという良識を与野党を問わず国会議員が発揮していることを
国民は虚心坦懐に受け止め、高く評価すべきだ。今回の事態が菅政権を延命したなどという矮小な視座から物事を見るべきではない。
筆者は外交官だった時期に日本の首相、ロシアの大統領を間近で観察することがあった。
その経験から国家首脳には非常事態のときに自らの命を投げ出してでも
国民と国家のために奉仕するというプログラムが埋め込まれていると確信している。
ここで重要なのは菅直人という固有名詞ではない。日本国内閣総理大臣(首相)という役職が重要なのである。
日本を愛するすべての人が、いまこの時点で首相を支持し、日本の社会と国家を強化するための行動をとることが重要と信じる。
政治休戦や大連立などというシナリオで、この国難を克服することはできない。言葉の正しい意味で翼賛体制を確立する必要がある。
翼賛について『広辞苑』(岩波書店)を引くと<力をそえて(天子などを)たすけること>と解説されている。
太平洋戦争中の翼賛政治会や翼賛選挙の負の意味に引きずられずに、
日本人1人1人が、民主的手続きを経て日本の政治指導者に選出された菅直人首相を助けることが重要である。
情報管理が厳しくなされているので、東京電力福島第一発電所(福島県大熊町)で起きている事態について詳細を知ることはできない。
しかし、あらゆる場合に備え、国民と国家の安全を保障するために菅首相にフリーハンドを持たせることが重要だ。国家指導者としての良心に従い、
菅首相は超法規的措置を含め、最善を尽くすべきだ。法的手当が必要な事柄について、自民党、公明党をはじめとする野党も、
政争ではなく国家的見地から最大限協力すべきだ。大震災対策の臨時予算を可及的速やかに成立させる必要がある。
http://news.livedoor.com/article/detail/5409634/