ロシアの民族主義「危険水域」 クレムリン前で数千人暴徒化
【モスクワ=遠藤良介】モスクワのクレムリン前にあるマネージ広場で11日、
ロシア民族主義を支持するサッカーファンの若者ら数千人が暴徒化して治安部隊と衝突する事件があり、
市内各地で民族主義者による外国人襲撃がその後も相次いだ。
クレムリンの近くでこの規模の示威行動が暴走するのはきわめて異例。
ロシアの民族主義が「危険水域」に入ったことが改めて浮き彫りになった。
マネージ広場では11日午後、最大1万人程度の若者らが「ロシア人(民族)のためのロシアを」などと叫んで暴徒化し、
南部カフカス地方出身とみられる通行人らを袋だたきにするなどした。治安部隊との衝突で数十人の負傷者が出たもようだ。
若者らは、モスクワ北部で今月6日未明、サッカーファンの一人が
カフカス出身者との乱闘で死亡した事件の捜査に抗議して広場に集結。
ロシアで台頭する民族主義団体が騒ぎをたきつけ、サッカーファンが同調する新たな構図だった。
治安部隊は11日夜までに広場から若者らを排除したものの、一部はモスクワ地下鉄などで暴力行為を継続。
12日までに外国人労働者などを狙った十数件の殺傷事件が発生しており、在露の外国人団体が警戒と自制を呼びかけている。
ロシアでは、カフカスや中央アジアなど旧ソ連近隣国からの外国人労働者の流入が活発化。
プーチン前政権以降の大国復活路線にも呼応して民族主義が勢いづき、
少数民族や外国人に対する襲撃、それに対する報復が頻発している。
ロシア正教会モスクワ総主教区の広報責任者は露メディアに
「民族間対立は危機的状況にあり、破滅的な流血を防ぐには迅速かつ真剣な措置が不可欠だ」と強調。
メドベージェフ大統領も治安維持の徹底をヌルガリエフ内相に指示した。
だが、11日の暴動ではモスクワ市警の長官自身がデモ隊との交渉を余儀なくされた上、
治安部隊は暴徒約65人を短時間拘束したにすぎない。
反政権派の小規模デモ集会を粉砕するのと対照的な治安当局の無策ぶりには批判の声も上がっている。
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101213/erp1012132009008-n1.htm