「絶対儲かる」を信用する消費者保護は必要か
金融庁は先月下旬、アフリカで金の採掘事業に対する投資を持ちかけ、社債を販売していた「ワールド・リソースコミュニケーション」(W社)に、
有価証券届け出書の提出義務違反の疑いで警告書を出した。
元本保証付きで必ず儲かる金融商品が存在するならば、お目にかかりたいもの。
昔から、「うまい話には棘(とげ)がある」と耳にタコができるくらい聞いてきたはずの高齢者たちが、いとも簡単に騙されるのはどうしてか。
古くは1985年に紙切れ同然の純金ファミリー証券を売りまくった豊田商事事件。
最近では「円天」や、えび養殖の「ワールドオーシャンファーム」など、この手の投資詐欺がゴマンとあった。
今回の事件も一連の事件と同じだが、手口は巧妙になっている。2006年にできた金融商品取引法は、
それまで投資商品ごとにあった法律にヨコ串を入れてできた法律だが、毎年のように法改正しており、まだまだ未完の金融法令だ。
今回も盲点を突かれた。金融商品取引業者は有価証券報告書(有報)の届け出義務が課せられているものの、勧誘の相手が50人未満ならば届け出不要。
W社は49人を対象に一商品を販売する方法を繰り返して、金商法が定める有報の提出義務を逃れていた。
だから金融当局はいまのところ警告書を出すに留まっているのだ。
W社のテクニックに新味はない。当初は社債を購入した顧客に高い配当を出して、追加の投資を呼びかける。
顧客は望外の配当金に目がくらんで、知人などを紹介し購入者が増える。不審がる人には、高値で買い戻すから軍資金を出せなどと嘘を言って騙し取る。
これまで2000人に約75億円分を販売。1人当たりの購入額は470万円で、8割が60歳以上という。
団塊世代の大量定年が始まったのが07年。その年に円天やえび養殖の投資詐欺が表面化した。
銀行の低金利や証券市場の低迷が、ウマい儲け話に引っかかる背景にあるとは思いたくないが、企業戦士で世事に敏感なはずの団塊世代の人々も、
仕事と生活に追われて金融知識には疎かったのどうかは、知る由もない。
(略)
http://www.zakzak.co.jp/economy/investment/news/20101104/inv1011041631000-n1.htm