ソウル市内の自宅で10日、死亡しているのが見つかった北朝鮮の元朝鮮労働党書記の黄長ヨプ(ファンジャンヨプ)氏は、1997年の韓国亡命後、金正日(キムジョンイル)総書記の独裁体制批判の急先鋒(きゅうせんぽう)に立った。
北朝鮮から暗殺目的で工作員を送り込まれるなど命を狙われながら、舌鋒(ぜっぽう)が緩むことはなかった。
10月初めに黄氏に会った関係者によると、87歳の高齢にもかかわらず元気そうだったという。
9月28日の朝鮮労働党代表者会について、金総書記の後継者が三男の金正恩(キムジョンウン)氏に確定しても、「北朝鮮は変わらないだろう」と述べ、「今後も批判を続けていく」と強調していたという。
黄氏は故金日成(キムイルソン)主席の側近として北朝鮮の国家指導原理「主体思想」を体系化し、要職を歴任したトップエリートだった。
しかし、北朝鮮が「人民を餓死状態に置きながら改革開放を拒否し、戦争準備に没頭している」として、97年、韓国に亡命した。
講演や執筆活動では、「金正日政権は暴圧政権」「破廉恥な国際犯罪集団」などと、厳しい北朝鮮批判を展開してきた。
北朝鮮からは、「裏切り者」呼ばわりされ、殺害予告などの脅迫を度々受けた。
韓国の情報機関、国家情報院は24時間態勢で厳重な警護を行っていた。
今年4月には、黄氏を殺害する目的で北朝鮮工作員2人が脱北者になりすまし、韓国に入国したとして、韓国当局が摘発した。
関係者によると、黄氏はこの時も「私の使命は独裁体制を打倒することだ。命を狙われても怖くない」と平然と言ってのけたという。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20101011-OYT1T00205.htm