中朝合同、中国全土で「脱北者狩り」 北朝鮮に強制送還
2010年9月27日3時6分
【北京=西村大輔】北朝鮮と中国の治安当局が合同で、雲南省や広西チワン族自治区、山東省
など中国各地でひそかに働いている脱北者を拘束し、北朝鮮に強制送還していることがわかった。
中朝関係筋が明らかにした。中朝の治安当局が中国全土で合同取り締まりを行うのは極めて異例
だ。28日に始まる朝鮮労働党代表者会を前に、北朝鮮が国内引き締めのために大々的な「脱北
者狩り」を展開している可能性がある。
関係筋によると、北朝鮮の国家安全保衛部など複数の治安機関から派遣された秘密警察官ら1
00人余りが中国入り。中国側も武装警官ら数百人を動員し、中朝双方の数人でチームをつくっ
て各地で行動しているという。取り締まりは6月ごろから始まり、中国全土で少なくとも数十人
の脱北者が拘束された模様だ。
秘密警察官らが送り込まれているのは、ベトナムやラオス、タイなど東南アジアへの脱北ルー
トになっている雲南省や広西チワン族自治区の国境周辺のほか、脱北者をかくまう可能性がある
韓国人や中国籍の朝鮮族の店や企業が多い中国東北地方、山東省、広東省など広範囲に及ぶ。
取り締まりでは、北朝鮮の秘密警察官が貧相な服装で脱北者になりすまし、脱北者が働いてい
ると見られる飲食店や雑貨店などを客として訪問。頻繁に通って店員らと親しくなり、脱北者か
どうかを見極めるという。脱北者が働くとされる企業に作業員などとして潜入することもある。
労働党の代表者会では、金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継体制作りが進むかどうかが
大きな焦点だ。北朝鮮当局にとっては国内の安定や国民の統制が急務となっており、年間数万人
ともいわれる脱北者に危機感を強めているもようだ。一方、関係筋によると、脱北者の強制送還
が人権問題として国際的な批判を受ける中、中国は摘発に慎重になっているものの、北朝鮮の要
求も無視できない状況だという。
http://www.asahi.com/special/08001/TKY201009260318.html