モスクワで都市交通問題を研究している鳩山由紀夫前首相の長男紀一郎さん(34)が、
「世界の主要都市で最悪」とされるモスクワの交通渋滞の改善策に関する提言書を出版した。
日本の事例だけでなく、ロシア人の運転マナーも考慮に入れた内容で、渋滞緩和の切り札となるか、関心を呼んでいる。
【モスクワ大前仁】
本の題名は「モスクワ 巨大都市の交通問題」。モスクワ市交通通信局長との共著で、ロシア語で書かれている。
鳩山さんは08年9月からモスクワ大の客員講師として研究に携わっており、著書は一つの大きな成果だ。
◇押し寄せ、割り込み、無謀駐車が横行
出版に先立ち、鳩山さんの“実地研究”に同行取材した。鳩山さんが運転する車で市中心部を走ると、
ロシア首相府に面する交差点に向かって車が次々と突っ込み、身動きが取れなくなった。
「典型的な押し寄せです」と鳩山さん。日本のドライバーにとって、先が詰まっている交差点に入らないのは「常識」だが、モスクワでは日常茶飯事だ。
さらに割り込みや急な車線変更、無謀な駐車が横行し、渋滞を深刻化させている。交通規則を学んでいない運転者も多い。
鳩山さんは「ロシア人の多くは、自分の運転がどのような影響を与えるのかを考えるのが苦手」と指摘する。
モスクワでは政府要人の車両通行を優先し、幹線の通行が頻繁に遮断される。
このため、ドライバーは「いつ止められるか分からない」という強迫観念から、交差点へ押し寄せているのではないかと分析している。
モスクワの渋滞に関する具体的な統計はないが、鳩山さんは「東京の2倍はひどい」とみる。
経済成長を背景に、モスクワでは車の保有台数が過去15年間で4倍に増えたが、道路整備が追いついていない。
市当局の交通行政も、過去の交通量を基準にするなど旧態依然のままだ。
経済損失は年間180億〜260億ドル(約1兆5000億〜2兆2000億円)に達するとの試算もある。
「現状を考えると、渋滞問題の解決は容易ではない。簡単なことから始めて、少しずつ効果を出した方がいい」と話す鳩山さん。
モスクワでの研究は来年まで続ける予定。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100923k0000e030024000c.html