山口市の湯田温泉に近い住宅街の一角に、店全体でエコを体現している洋食屋がある。「キッチンあさくら」。
食材の廃棄ロスが少ない「真空調理法」を取り入れ、残飯などは生ごみ処理機で堆肥(たいひ)に。今夏には、
屋根に断熱塗料を塗る徹底ぶりだ。
オーナーの森永恭平さん(54)は19歳で上京し、銀座の資生堂パーラーで修業。洋食の本場欧州でも腕を
磨いた本格派だ。23歳のとき、父親が経営する洋食店に戻り、25年前にバトンを渡された。今もその父や妻、
娘ら5人で店を切り盛りしている。
エコに取り組むきっかけは、10年ほど前に耳にした同業者の一言。「うちは油垂れ流しだし、ごみも適当だよ」。
食に携わる人間として、恥ずかしかった。「自分は天からの恵みに真剣に向き合おう」と決意した。
真空調理は、食材に下味や焼き目を入れ、調味液を加えて真空包装し、低温加熱する手法だ。高温加熱の
調理に比べ、栄養が損なわれにくく、光熱費も削減できる。「何より食材の『ロス』が減る」という。
野菜の切れ端も出し汁やソースで使い切る。それでも残る野菜の芯やくずは生ごみ処理機に投入。生まれ変
わった堆肥は、知人や農家の手で土に戻される。7月末には屋根に断熱塗料を塗った。屋根裏の温度は塗装前
に比べ15度も下がったという。
商売第一に考えたら、経費面は馬鹿にならない、と笑うが、「自分の子孫、次世代のためです」と、その思いに
揺るぎはない。
http://mytown.asahi.com/yamaguchi/news.php?k_id=36000001009140001